民主法律時報

2012年2月号

2012年権利討論集会を開催

事務局長・弁護士 増 田   尚

 2月18日、19日の2日間にわたって、琵琶湖グランドホテルで、2012年権利討論集会が開催されました。当日は大雪に見舞われましたが、200名を超す参加者による討論で熱気にあふれた集会となりました。
 冒頭の城塚幹事長によるあいさつでは、この間の橋下市長による思想調査まがいのアンケートに対し、労働組合、学者、弁護士の共同体である民法協の特質を遺憾なく発揮し、即時に対応した中で、抗議の声が広がり、野村特別顧問が「凍結」を言い出すに至ったことがふれられました。
 全体会の記念講演では、山家悠紀夫さん(暮らしと経済研究室主宰)に、「東日本大震災後の日本経済~経済・財政・生活の再建のために~」と題して、集会直前に閣議決定された「社会保障と税の一体改革」や、TPP、震災復興などの日本経済の課題について、明快に分析いただきました。震災後の緊急の課題として原発事故の収束と脱原発への転換を指摘し、すでに原子力発電所54基のうち3基のみが稼働している状態であるのに、何ら電力需要の不足は生じていないとして、原発ゼロは実現可能なことが証明されていることを明らかにしました。また、復旧・復興の課題と、震災前から持ち越しとなっていた暮らしと経済の課題について峻別し、火事場泥棒的になされる復旧・復興に名を借りた「改悪」を警戒すべきであり、特に、「復興増税」と言いながら、実際には、減税とセットで見れば、法人税による企業負担は減っていることを指摘されました。
 次いで、社会保障と税の一体改革についても、消費増税などの負担増に一方で、年金給付額の引き下げが盛り込まれ、更には、外来受診時の定額負担制や、生活援助の提供時間を60分から45分に削減、ケアプラン作成の有料化、年金支給開始年齢の引き上げなどの給付削減が企まれており、暮らしをますます厳しい状況に追い込む失策であると明言されました。消費増税については、逆進性や利益のない事業者へも負担を強いるものであり、景気を悪化させる愚策であると指摘されました。
 また、TPP参加については、南北アメリカで地位が低下したアメリカが、日本を巻き込んで、アジア太平洋地域に乗り込む足場づくりがねらいであると指摘し、日本にとっては、すでに非農産品の関税率が先進国中最も低く、世界一の農産物純輸入国であって、これ以上の「開国」は必要ないこと、EPA等の2国間協定で十分対応可能であり、他方で、アメリカンスタンダードの押しつけにより、暮らしの安心安全、国民の権利や財産が危うくなる「壊国」への道であると警鐘を乱打されました。
 このように間違いだらけの野田政権の経済政策に対し、山家さんは、暮らしをよくし、日本経済を再生するために何が必要であるかについて、賃金の引き上げと社会保障の充実が必要であることを指摘されます。昨今の経済論が、国民のニーズや暮らしの実態から出発するのでなく、国家の側の都合から語られることへの異常さを指摘しつつ、財源問題についても、日本の「金余り」の状況を具体的なデータでもって告発し、負担能力のある企業への負担強化に優先的にとりくむべきことを強調されました。
 目前の春闘をはじめとして、労働者からの賃上げや労働条件の改善要求に対し、企業側は、国際競争力の強化や景気の悪化を理由に、これを頑として拒否する傾向にありますが、富の分配・再分配が可能であり、そのことが暮らしと経済を再建する道であることに確信を持つことができたのではないでしょうか。
 全体会の特別報告は、1日目に、市職員へのアンケート問題等(竹村博子さん・大阪市労組委員長)、泉南アスベスト国賠訴訟(山田哲也・原告)、JAL訴訟(西岡ひとみ・小森啓子・原告)、北港観光街宣禁止仮処分勝利(松澤伸樹・建交労府本部書記長)、2日目に、共通番号制(坂本団・日弁連情報問題特別委副委員長)、過労死防止基本法(岩城穣・過労死防止法制定実行委事務局長)、有期労働契約法制(楠晋一・事務局員)、教育基本条例案(末光章浩・大教組副委員長)の8本がなされました。また、「教育基本条例案・職員基本条例案の撤回・不提出を求める決議」、「真の有期労働契約法制を求める決議」、「大阪・泉南アスベスト国賠(第1陣訴訟)大阪高裁不当判決に抗議する決議」の3本が採択されました。
 全体会や分科会を通じて、各団体や各委員会・研究会での日ごろの活動の成果が持ち寄られ、交流を図ることができたことは、権利討論集会の大きな魅力の一つだろうと考えます。この魅力がますます発揮でき、たくさんの方に明日の活動への意欲を高めてもらうことができるよう、今後も、運営の改善に努めてまいりたい所存です。

各分科会の報告 


第1分科会
①リストラ、合理化攻撃とどう闘うか ②労働委員会における闘いを職場で、団体交渉で、どう活用する

 報告:弁護士 菅野 園子

 今年の第1分科会では、1日目は、リストラ合理化攻撃とどう闘うか。「整理解雇」との闘い。というテーマで、2日目は、労働委員会をどう活用するのか。というテーマで討論をしました。
 1日目は、1審で敗訴後2審で逆転勝訴した飛翔館事件、今年3月29日、30日に判決を迎えるJAL不当解雇撤回裁判原告から発言をいただきました。
 飛翔館事件高裁判決については、正規労働者を整理解雇して、賃金の安い非正規労働者にかえるという方法で人件費を削減することは原則許されない。団交によって妥結出来ない可能性があったとしても、整理解雇のような労働者に重大な不利益を生ずる法的問題については関係当事者が十分意思疎通を図り誠実に話し合うということは公の秩序であると認定された部分は他の整理解雇の事案においても非常に使えるという下迫田浩司弁護士の発言がありました。飛翔館事件の原告からも、裁判で勝訴するために、いつ、どこにどのタイミングで署名や葉書、チラシなどの宣伝活動を行うかについてはかなり位置づけて時宜に応じた宣伝活動を行ったという発言がありました。同じく弁護団の山﨑国満弁護士からは、こういうすばらしい先生が解雇されていいはずはない、整理解雇の形はとっているが、実際は不当解雇だという確信をもって事件にあたったという発言が印象的でした。JAL事件原告からは、今ベテランが切られて職場の指導もおかしくなっている実態やどのような運動を進めているかについて報告と支援の呼びかけがありました。
 2日目については、INAX事件では河村学弁護士より、ビクター事件の当該組合より発言がありました。INAX事件では、最高裁判決に至るまでの7年間脱退者を出さずに団結を維持することができたということと団結をしたために、団交は拒否するも会社にとって無視できない存在になったということを述べられていました。ビクターにおいても、2月21日の判決に備えて様々な要請活動を行っていることの報告がありました。讀賣テレビ放送事件の当該組合からは、昨年地労委で不当労働行為救済命令が出されたにもかかわらず、会社は遵守せず、それに対して何らペナルティを課されない現状は極めて問題である旨の発言がありました。NTT事件西日本団交拒否事件については、河村武信弁護士より  年間の闘いを振り返って、総括的な発言がありました。
 全体的な発言をまとめると、労働委員会のメリットとしては、裁判所がなかなか理解しない不当労働行為という概念を正面から取り上げてくれることである。飛翔館事件では、懲戒処分の濫用ということは認められても不当労働行為であるかどうかは判断しなかった。労働委員会の手続を通じて、労働者側が理論的な正当性を取得していくということでは大きな意味はある。労働委員会の手続で、労働者が会社に詰め寄っていけるということの意味や、委員のあっせんで、最終解決に持っていける場合もある。運動と連動させながら、労働委員会の手続を使っていくことには大きな意義がある、申し立てて損はないという積極的な意見もありました。
 一方で、労働委員会の命令については、命令を守らないことに何ら罰則が課せられていない、地労委から中労委、裁判所と5審制になっているという現状はきわめて問題である。団交拒否というのは、まさにその場で発生をしている問題なのになぜ、解決に何年もかかるのか。緊急命令も発令されているが、INAXでは無視されている。制度的な問題にも民法協として取り組んで行く必要はあるのではないかという問題提起もされました。労働委員会について、突っ込んだ議論ができ大変意義のある分科会でした。


第2分科会 
非正規労働者の権利を守るための組合活動を考察しよう

報告:弁護士 楠 晋一 

 第2分科会の初日は模擬団交と派遣と有期雇用について基調報告がなされました。
 模擬団交は、担当事務局が作成した事案、①派遣職員が労働条件について派遣先に団体交渉を要請する、②有期職員がセクハラを受けたとして会社に団体交渉を申し入れる、を基に、クイズを用意して参加者に質問し、参加者から回答してもらうという形式をとりました。
 事案があまりに練れていなかったこともあって、参加者から司会に対する逆質問が多数なされるなど、参加者からいろんな意見を頂きました。そんな中、村田浩治弁護士、中村和雄弁護士、労働安全センターの北口修造さんなどから、派遣元と派遣先それぞれに対する団体交渉申入れの必要性、組合を通さずに会社が組合員に直接接触を図った場合の対応の仕方といった、団体交渉する際の具体的な戦略について様々な意見が出されました。
 また、セクハラの問題については、有村とく子弁護士から、組合に男性社会の側面があるという指摘とともに、組合員がセクハラ問題に取り組むときは、働く仲間の権利が侵害されているという意識で取り組んでほしいという心構えを語っていただきました。
 2日目は、当該からの事件報告と非正規として働くことの辛さを当事者や組合、弁護士からそれぞれの立場で語ってもらいました。
 当事者からは、①賃金格差や雇止めの不安だけでなく、非正規だということで軽く扱われること、非正規だからやらなくてよいと仕事の制限を受けることでキャリアアップの妨げとなることへの不満、②低賃金の結果として将来的に厚生年金が受けられないことによる個人や国家の経済的な不安、③外注や子会社化することで組合員を増やさないようにする労務管理に対して、組合としてどう立ち向かうのか(不当労働行為といえないか)、④当事者が闘争中に病気や怪我をしたときへの備え(組合が主導する共済制度の必要性)、⑤事件が起きるまで組合に来てもらえない現状をどう改善するか、また事件が終わった後に組合に定着しない状況をどう改善するかなど様々な意見や問題が提起されました。
 十分な議論の時間が確保できないなど進行上の問題はあったものの、会場からの発言が多く活気に満ちた分科会だったと思います。分科会での問題提起をその場限りで終わらさずに継続的に議論ができるような場の設定やそれに向けての各自の努力が必要だと感じました。


第3分科会 
KAROSHI(過労死)の無い時代を目指して

報告:弁護士 上出 恭子

 ■映像の紹介・松丸正弁護士の報告
 分科会の冒頭では、1ヶ月の労働時間が500時間を超えるトラック運転手(  歳)のドキュメンタリー映像「フツーの仕事がしたい」に関するニュースで始まった。主人公(歯は抜け、顔色は土色で、とても  歳には見えない疲労感があふれる。)が労働組合に入り断交をする最中、病に倒れる。仲間とともに別会社を立ち上げて「フツーの仕事」を手にする場面で終わるものの、現代日本版「奴隷労働」ともいえる過酷な労働実態は痛烈な印象を残した。
 引き続いて、「大庄事件」のテレビ報道の紹介の後、事件を担当した松丸弁護士より、残業が  時間に満たない賃金分は基本給から差し引くという給与システム、そして、1ヶ月100時間の時間外労働を認める特別条項のある  協定が、過労死を生み出す大きな要因となったとの報告があった。
■各報告
 このような映像により長時間労働の実態を踏まえて、以下の報告がなされた。
 全印総連の村上さんから、  時間型社会が労働者の健康に悪影響を及ぼしていることについて、  立野嘉英弁護士からの新たに策定をされた「心理的負荷による精神障害認定基準」についての解説、  当職より、厚生労働省発表の「職場のいじめ・嫌がらせに関する円卓会議ワーキング・グループ報告について」の報告、  足立賢介弁護士より、過労死事案における不払残業代の逸失利益を算定の基礎に入れることについての論点の紹介、  新聞労連の伊藤明弘さんより塚野裁判の報告、  西垣迪世さんからの事例報告があった。
■労働運動総合研究所事務局次長・藤田宏氏の講演「働くルール フランス・イギリスの常識と日本の非常識」
 1日目は、日本の労働実態を検討した上で、2日目の冒頭には、藤田氏よりフランス・イギリスの労働実態に関する講演をいただいた。
 労働時間規制については、フランスでは、週  時間制(1時間から1時間半の休憩時間を含む)が実施されているが、その導入には、「労働力の安売りをしない!」という共通認識、労働時間の長時間化の導入を徹底阻止するという労働者の団結があることが紹介された。イギリスでは、時間外労働時間を含め週  時間が上限、隔日間の休憩時間として最低  時間をあける必要があるとのことであった。
 また、有給休暇に関する規定の解説もあり、仮に日本でフランスなみの有給を取得するとなれば、約200万人の雇用の創出が可能であるとの試算もあるとのことであった。
 過労死が生じない背景として、このような労働時間に関する規制の他、「富を創るのは労働者」「労働力の安売りをしない」という労働者の共通理念があるとの指摘が興味深かった。
 このような「働くルール」を守らない使用者はいるのではないかとの質問では、実態としては「労働者」であるのに、ルールの適用を受けない「非労働者」と扱って脱法行為をする者がいるとのことであった。
■過労死防止法制定に向けての取り組みの報告
 全国過労死家族の会代表世話人の寺西笑子さんから、いくら、事後に法的な救済が一定なされたとしても、「大切な家族は戻ってこない」という遺族の切実な思いから、過労死予防法に向けての取り組みが行われてきた経過、及び、2度にわたる院内集会の成功、100万人署名の取り組みについての報告がなされた。過労死予防の重要性が再確認された。
■ 討論・検討では、「働き方」ではなく、使用者に対して「働かせ方」を変えさせるための運動が重要だとの意見、アスベスト国家賠償の裁判でなぜ国を被告にするのか、という視点と過労死防止法の制定の視点は同じだとの指摘が印象深かった。
 現在の労働実態を認識する映像の紹介から、労働時間規制の視点では先進国といえるイギリス・フランスの労働実態の学習を踏まえて、過労死のために今何が必要となってくるのかについて一連の検討ができ、有意義な分科会であったと思う。
 参加者は、 27名であった。


第4分科会 
貧困を解消し、格差を是正するために―社会保障とセーフティネットの「あるべき姿」を考える―

報告:弁護士 大前 治

◆貧困・低所得の実態
 第4分科会には約20名が参加しました。
 前半では、貧困問題の実情や各団体の取り組みが報告されました。
 自交総連からは、「労働相談が半分、生活相談が半分」というほど労組として生活全般へのサポートを重視していると報告されました。多くのタクシー労働者は歩合制の低賃金であり、病気などの要因で直ちに貧困状態に陥る実態があります。それゆえに労働組合として休職・失職者の生活保護申請を援助するなどの地道な活動により、「労働組合に入っていれば、いざというとき助けてくれる」という信頼感を広げているとのことです。また、その信頼感が組合費の確実な徴収にもつながっているとのことです。
 全大阪生活と健康を守る会連合会(大生連)からは、経済的貧困にある人の多くは社会から疎外・排除されているとの指摘がありました。生活と健康を守る会に支援を求めてきた人のなかでも、後で連絡が取れなくなるケースがあり、孤立を深めている人が多いとのことです。
 コープしが労組からは、宅配購入をしている家庭のなかで、貧困により代金滞納になる事例を数多く見聞きしているとの報告がありました。特に滋賀県の山間部などでは、周囲に食料品店のない過疎集落などで、独り暮らしで買い物にも行けない人への支援が必要となっているとの発言も出ました。
 貧困をめぐる運動については、「観戦型ではなく参加型の運動が大切」という提起が大生連から出されました。市役所交渉などでも代表者だけでなく全員がマイクを握って、一人一人が自分の言葉で思いを伝えていくことが、その後に積極的な活動参加につながっているなどの成果が紹介されました。
◆社会保障と税の「一体改革」について
 後半では、野田政権が進めようとする「社会保障と税の一体改革」について議論されました。
 最初に、全厚生労働組合の方が作成されたパワーポイントを上映して、「一体改革」の問題点を学びました。そのなかで、歴代政府(自民党時代を含む)は「これからは3人が1人を支える騎馬戦型の社会」であり「支える側が少なくなるので負担が増大する」と宣伝してきましたが、それが実態とは異なることが指摘されました。データ上は「支えられる側」に区分される人のなかにも勤労者・高所得者・富裕層が存在しており、そのことを意図的に無視した数値が利用されていることが明らかになりました。
 自由法曹団からは、一体改革のための不可欠なツールとして「共通番号制」が導入されようとしており、その問題点を指摘していただくとともに、昨年9月にはシンポジウムを開催し、現在は国会議員要請に取り組んでいるとの報告がありました。
 2日間を通じて活発な議論が交わされるとともに、まだまだ「一体改革」や「共通番号制」の問題点を広く知らせていく必要があると再確認できました。


第5分科会 
橋下府政の3年9か月を検証し、松井府政・橋下市政のもと、住民の要求を実現する運動をどうつくるか

報告:弁護士 遠地靖志

 第5分科会は、「橋下府政の3年9か月を検証し、松井府政・橋下府政のもと、住民の要求を実現する運動をどうつくる」をテーマに討論しました。
 1日目は、府職労の小松康則書記長から、橋下府政の3年9か月の間に、トップダウンの徹底による府政運営のもとで府民の暮らしに直結する施策の切り捨てが行われていること、しかし、一方で、自治労連のアンケートなどで、地域医療・救急医療の充実や高齢者・障害者・子育て支援の充実を求めていることが報告されました。
 また、大阪労連から、大阪で労働者の貧困化がいっそう進んでいること、高卒の就職率の悪化で高卒と同時に失業者となる深刻な実態が報告されました。
 報告を受けて、参加者からは、周辺都市でも維新の会の市長のもと、市民生活切り捨ての政治が進行していることや、「若年者での破産が増えている。こうした貧困層が改革を求めて橋下氏を支持しているのではないか」「自分の周りにも、希望を持てなくて、年金保険料を払うのも大変という人もいる。自分たちのひどい状況の原因が正規と非正規の対立構造にあるかのように見せられている」などの発言がありました。
 最後に、大阪市労組の中山直和副委員長から、大阪都構想の問題点や大阪市の現状、アンケート問題についての報告がありました。
 2日目は、職員基本条例、教育基本条例について議論。最初に、大教組の末光章浩副委員長から、橋下府政のもとで、すでに「教育こわし」が進んでいること、教育基本条例は、「特定の政治勢力や財界に奉仕する人材」の育成を目的とし、目的を実現するために教職員を支配する体制をつくる点にあることの指摘がありました。また、遠地弁護士から2条例の法的問題点について報告がありました。
 報告を受けて参加者からは、「教育基本条例は、子どもたちに競争を持ち込むもので断固反対」「職員基本条例は、マスコミが『職員にも問題がある』などの報道がされるもと、市民に受け入れられ安い面がある。しかし、グローバル化のための市職員をつくることは、住民にも犠牲を強いるという点をもっと打ち出していくことが大切」「忙しくて保護者会に出られない親などにもどう伝えていくかが課題」などの発言がありました。
 最後に、梅田章二弁護士から、2日間の議論をふまえて、教育の問題でも自治体のあり方でも、大阪のグランドデザインを描きながら2条例反対の運動を進めていこうとの提起があり、分科会は終了しました。


第6分科会 
自由な街宣活動を守るために 

報告:弁護士 西川 大史

一 はじめに
 第6分科会では、「自由な街宣活動を守るために」をテーマに議論をしました。参加者は計20名です。
二 1日目の議論
 まず、大阪経済法科大学の丹羽徹先生から、「街宣活動」と憲法についてお話をいただきました。丹羽先生からは、表現の自由、とりわけ団体の自由としての表現の自由の意義、重要性について、歴史的経緯を踏まえてお話しいただき、集団的であるが故に社会との軋轢もあるが、にもかかわらず憲法が保障していることの意味について問題提起がなされました。また、団結権などは結社の自由獲得の歴史の中で中心的に位置づけられたものであり、労働者が団体で表現することは労働基本権の一部であり、国家はそれを積極的に保護しなければならず、また、その表現行為によって生ずる不利益に対して使用者は受忍義務があることをお話しいただき、表現の自由、労働基本権の意義、重要性について改めて学習、確認することができました。
 また、出田健一先生からは、北港観光バス街宣禁止仮処分事件について報告をいただくとともに、現在の裁判例の到達点、学説の議論状況等について詳細に整理していただくとともに、街宣禁止の仮処分が労働部に係属しない大阪地裁の運用についての問題点を指摘されました。
 さらに、徳井義幸先生からは、約  年前に担当されたひかみカントリー事件の経験を踏まえて、なぜ労働組合が街宣活動にまで至ったのかという動機、経緯を理解してもらうことの重要性について問題提起されました。
 その後、参加者からも、各労働組合での取り組み等について活発な議論、意見交換がなされ、街宣活動の重要性を改めて再認識するとともに、今後の闘い、運動を進めるうえでの確信(核心)を持つことができました。
三 2日目の議論
 2日目は、街宣活動に対する警察権力からの干渉、弾圧について、国民救援会の伊賀カズミさんからお話をいただきました。
 まず、これまでの弾圧との闘いについて紹介いただき、弾圧、干渉が近年増加しているという現状、干渉の態様等の分析や、警察権力からの弾圧、干渉に対しては、OJTのみならず理論的意義を学習することの重要性等についてレクチャーいただきました。また、街宣活動は「権利」であり、許可なく街宣活動を行うことが、街宣活動の自由を守るためにも重要であることも改めて確認することができました。
 その他に、ネット宣伝ではなく、ビラ配布、街宣活動をすることがなぜ重要なのか、民主主義とは何なのか、なぜ警察権力は弾圧、干渉するのか等について議論がされ、多くの参加者から意見が出されました。
四 さいごに
 この2日間の議論を通じて、街宣活動が憲法上重要な権利であるとともに、民主主義社会において重要な役割を果たしているかを改めて確認することができ、今後の運動に強い勇気と希望を持つことができたのではないでしょうか。
 近年、労働組合の街宣活動に対する制限や、警察権力からの弾圧干渉が増加しているという状況に鑑み、分科会だけにとどまらず、今後もさらなる議論、闘いを続け、弾圧、干渉に屈することなく自由な街宣活動を我々の力で守ることを参加者全員で確認することができました。


第7分科会 
これからの労働運動のかたち ~海外の運動を日本に生かす

 報告:弁護士 喜田 崇之

一 はじめに
 第7分科会は、「これからの労働運動のかたち~海外の運動を日本に生かす」と題し、主にアメリカで発生した「OCCUPY運動」について、学び、考え、討論を行うこととした。本分科会の主な目的は、「OCCUPY運動」についての討論を通じて、日本で新しい労働運動を作るきっかけとすることであった。2日間を通じて、31名の参加があった。
二 分科会の内容
(1)初日
 まず初めに、実際にアメリカで起きた「OCCUPY運動」の映像を放映し、運動の様子や、当事者のインタビューの話を聞いてもらった。
 次に、大阪市立大学経済学研究科チャールズ・ウェザーズ教授に、「OCCUPY運動」が起きるまでのアメリカの労働運動の歴史について、1時間ほど講義をして頂いた。
 続いて、アメリカのオークランド州に留学中の國本依伸弁護士とライブ中継を行い、オークランド州で発生した「OCCUPY運動」の様子や、現地の報道、住民の雰囲気・意識等について、報告して頂いた。
 その後、地域労組おおさかの中嶌聡さんがファシリテーターとなって、参加者に、「OCCUPY運動」について感じてもらったこと、学ぶべきところ、成功している理由等、各自の意見を出し合ってもらった。そして、それらの意見につき、日本にも取り込むことができる点はないか、実践できることはないか等の意見を出し合い、なぜ日本では同様の運動が起こらないのか等について議論がなされた。
(2)2日目
 2日目の最初は、地域労組おおさか青年部の松田明功さんから、「OCCUPY運動」を支えるツールであるソーシャルメディアについて総論的な話をして頂いた。
 その後、参加者を3つのグループに分けて、それぞれ「OCCUPY運動」の①「本質」は何か、②組織「運営」の在り方で学ぶべき点は何か、③情報等の「発信」の在り方について学ぶべき点は何か、をそれぞれのグループで議論した。
 グループディスカッションは、途中でメンバーを交代させながら、自由闊達に意見を出し合った。そして、それぞれのグループでどのようなことが議論をされたのか発表してもらい、参加者全員で意見を共有した。
 最後に、参加者一人一人が、この分科会で考えたこと、気付いたこと、これから考えていきたいこと等を1分間で話した。
三 まとめ
 分科会の内容は、大雑把に以上の通りである。詳細は、報告号にて報告するが、参加者全員が様々な意見を出し合って、「OCCUPY運動」について議論を重ね、今後の自分たちの運動を考えるきっかけとなったと思う。
         

連載 TPPリポート①  オリジナルTPPを読む

        弁護士 杉 島  幸 生

  1.  野田内閣は、TPP参加にむけての協議を開始しようとしているが、肝心のTPPの内容は依然として明らかではない。そこで、本稿ではオリジナルTPP(以下、「TPP」とする)を概観し、それを知る手がかりとしてみたい。

     

  2.  TPPは、次の20章と二つの付属文書により構成されている。①序章、②一般的定義、③産品の貿易、④原産地規則、⑤税関手続、⑥貿易救済措置、⑦衛生植物検疫措置、⑧貿易の技術的障害、⑨競争政策、⑩知的財産、⑪政府調達、⑫サービス貿易、⑬一時的入国、⑭透明性、⑮紛争解決、⑯戦略的連携、⑰管理上・制度上の規定、⑱一般的条項、⑲一般的例外、⑳最終規定+環境協定、労働協力に関する覚書。
      「①序章」は、TPPの目的を「締約国間の貿易の拡大・多様性を進めること、障壁を除去し物品及びサービスの貿易を円滑化すること、公平な競争条件を促進すること、投資機会を拡大すること、知的財産の適切かつ効果的な保護と執行を提供すること、貿易紛争を防止し解決する効果的なメカニズムを創設すること」とする。ここには加盟国の社会秩序や伝統、市民生活への配慮などは見当たらない。
  3.  「③産品貿易」の章は、条約中で例外品目とされなかったすべての品目の無関税化を義務づけている(ネガティブリスト方式)。④~⑧は、「③産品の貿易」の自由化をすすめるための技術的な規定であるが、ここにも見過ごすことのできない問題がある。例えば、ある産品の大量輸入により地場産業に重大な支障が生じたとしてもセーフガードを容易に発動することはできない(⑥貿易救済措置)。また輸入を認めるための検疫基準についても、輸出国が自国の基準が輸入国の基準と同等の効果をもつと証明すれば、必ずしもその基準を満たしている必要はないとされ、病害虫発生国であっても病害虫の発生していない地域において生産されたものであればその輸入を認めさせることができるとされている(⑦衛生植物検疫措置)。また検疫以外の技術的基準(例えば安全基準)も国際規格が前提とされ、より厳しい国内基準を設ける場合には、特にその必要性を説明しなければならない。また輸出国が自国の基準が同等の効果を有すると証明すれば、その輸入を認めざるを得なくなる(⑧貿易の技術的障害)。
  4.  「⑪政府調達」の章は、中央・地方政府が一定額以上の産品やサービスを購入する場合に、すべての加盟国の業者に向けて公開入札すべきことを定めている。これにより国内の事業者は、常に海外の事業者との競争にさらされる。また入札の際に産品・サービスの水準以外の条件を設けることはできない。地元業者を優先することや雇用する労働者に一定の労働条件を確保することを求めることなどはTPPルール上許されない。
  5.  「⑫サービス貿易」の章も、条例上特に例外とされたものを除き、すべてのサービス業の自由化を義務づけている。サービスの質を維持するための規制のみが許され、量的規制や経済政策上の規制をすることはできない。海外からのサービス輸入を規制することができない以上、国内規制も緩和せざるをえなくなるものと考えられる。例えば、日本の医療保険制度は、自由診療を原則認めていない。しかし、それでは海外からの医療サービス提供にとって支障となる。そうなればTPPを根拠に医療というサービス貿易の自由化のために混合治療を認めよ、株式会社による病院経営を認めよという要求が起きてくるのは必至だ。それは医療機関間の競争を激化させ、儲からない分野(例えば産婦人科など)への医療資源の振り分けは困難となるだろう。

  6.  「⑮紛争解決」の章では、TPPルールをめぐって加盟国間に紛争が生じた場合、国際仲裁裁判所に紛争解決を申し立てることができるとしている。ここでは加盟国の措置がTPPルールに合致しているかどうかだけが判断基準とされ、国民生活にとって必要であるとか、国内世論の支持を得られないなどということは考慮されない。しかも、裁判は原則非公開で行われ、その最終決定には不服を申し立てることができない。そして、仲裁裁判所の最終決定を実行できない加盟国は、相手国政府から賠償を請求されることとなる。TPPルールに適合しない国内規制は、例え国民の求めるものであっても排除さざるえない。TPPは国民主権を侵害するものである。

  7.  現行TPPには、「金融サービス」、「投資」の章がなく、「労働」に関する文書も付属文書にとどまり法的な効力はない。しかし、アメリカはこれらを正式な章とすることを要求し、「投資」の章に加盟国の投資家が私人の資格で相手国政府を訴えることができる規定を設けろと要求している(毒素条項)。そうなれば日本の経済政策全般がTPPルールに適合しているかどうかが、海外の大企業によりチェックされることとなる。もちろん労働規制もその例外ではなく、例えば、解雇権濫用法理が投資家にとって邪魔だとなれば、それがTPPルールに合致しているかが賠償の脅し付きで判断されることとなる。

  8.  TPP参加は、単に農業破壊というだけではなく、日本の経済主権を侵害し、日本社会のあり方を決定する力を私たちの手から奪うという危険性を有している。私たちはもっとTPPの恐ろしさについて学ばなくてはならない。

民法協新人歓迎企画「労働相談入門講座」について

弁護士 喜 田  崇 之

一 はじめに
 1月17日午後6時30分より、民法協新人歓迎企画「労働相談入門講座」が開催された。講師は、増田尚事務局長が務められ、労働者側で労働事件を受任する際の心構え、知っておくべきこと等を中心に話がすすめられた。
 参加者は、新人弁護士に限らず、ベテラン弁護士、労働組合員、司法修習生など、幅広い層の方々が参加され、合計45名の参加であった。特徴的だったのは、司法修習生が多く出席したのと、これまで民法協とは無関係の法律事務所に就職した弁護士も参加していたということであった。

二 講演の内容
 増田先生は、労働事件のそもそもの特性からお話をされた。
 不安定雇用・不当な労働条件を押し付けられているという労働者の状況を指摘し、労働組合の存在意義、団結権等の保障の重要性等を説かれた。続いて、労働をめぐる近時の情勢を、歴史的な法律の制定、政治的な動向等の紹介をしながらお話をされ、労働再規制がなされてきたことが紹介された。
 そして、具体的に労働者の権利を守るために何をすべきか、という観点から、労働組合の存在意義や、格差を是正するために様々な手段を用いて裁判闘争を行うべきであること、裁判闘争の中では裁判所前での宣伝や傍聴支援、公正な判決を求める署名集めを行うことの意味等を述べ、そのような裁判闘争を通じて、労使間の格差を超え、労働者の権利を擁護することが重要であることを説かれた。
 また、個別事件で和解解決する場合、使用者側から口外禁止条項を入れることを要求されることがあるが、このような口外禁止条項を入れることによって会社は違法・不法が隠されることになり、代理人として安易に応じるべきではないのではないか、という話もあった。
 民法協会員は、このような労働者の置かれた状況に対し、弁護士、労働組合、学者が共同して様々な支援・運動・研究を行っていることを紹介された。
 その他にも、近時の特徴的な相談類型についてもお話があり、有期雇用の雇い止め、高年法による継続雇用、退職強要・パワハラ・いじめ等の事件も相変わらず多いことが紹介された。その際、証拠の確保が大事になってくること、録音等の証拠化が重要であると説かれた。

三 懇親会
 その後、懇親会が開催され、25名程が参加した。
 「民法協」という存在を知らない修習生もたくさん出席されており、「民法協」という団体そのものに対する質問等も多数あった。懇親会を通じて、「民法協」という団体の存在と、労働者の権利を擁護する民法協の理念に少しでも共感してもらえたのではないかと思う。少しでも多くの修習生が民法協会員になる、いい機会になったのではないかと思う。

四 結び
 現在、民法協では、このような新人弁護士向けの学習会を年に3回ほど開催している。本来の目的は、新たな会員を確保したり、労働者側に立つ弁護士として重要なスキルを共有すること等であるが、近時、明らかに使用者側事務所の弁護士(会社の法務部担当弁護士等を含む)が参加したりして、講演内容が制限されている状態が続いている。
 もちろん、民法協の存在を広く知ってもらうだけでも学習会には重要な意義があるが、単にスキルやノウハウだけが流出することも避けなくてはならない。
 新人歓迎学習会の在り方をもう一度議論してもよいかもしれない。

ともに考えよう 子どもたちの未来と大阪の教育 教育基本条例に反対するシンポジウム

 弁護士 増 田   尚

 「大阪教育基本条例反対アピール」よびかけ人の主催により、1月28日、守口市文化センター・エナジーホールにて、「教育基本条例に反対するシンポジウム―ともに考えよう 子どもたちの未来と大阪の教育」が開催され、800名を超す参加者を得て大きく成功しました。
 シンポに登壇された方々から、口々に、教育基本条例案の問題点と、それが教育現場にもたらす悪影響について、語られました。
 池田知隆さん(前大阪市教育委員会委員長)は、大阪市でメンタルヘルスを害して休職する教職員が多いことを前夜の「朝まで生テレビ」で発言したところ、橋下市長から、申請の問題があるのではないか、診断書を調べる必要があるなど、何でも管理強化につなげる異常な対応をされ、また、それに対する聴衆の反応も、そんな教師は辞めさせろというもので、非常に攻撃的な対応が世間受けをしている問題点を指摘されました。また、自身の教育委員長としての経験からも、教育委員会が住民の意思を反映しておらず、形骸化していることは痛感しており、事務局主導にならないようにするための運営の改善は必要であるとしつつ、一足飛びに、首長が教育目標を決定し、ストレートに政治介入することは違法であると指摘されました。次いで、大阪の教育をめぐる状況として、学力の低下の事実を認めつつ、朝ご飯を食べる児童が全国平均10%低下など、家庭環境の悪化の反映でもあり、個々の教師の力量だけでは突破できず、社会全体でとりくむべき課題であると指摘されました。
 前田佐和子さん(前京都女子大学教授)は、橋下市長が知事時代に実施した学校選択制、学力テストの公表などは、イギリスのサッチャー時代に実施し失敗した教育政策であり、本家のイギリスでも、2006年には学力テストの公表を廃止し、2007年にはウェールズ州でテストそのものを廃止していることを明らかにしました。また、橋下市長は、学校選択制にするとコミュニティが破壊されるとの懸念に対しても、保護者にコミュニティ維持か他校への入学かを選択させればいいと言い、コミュニティ破壊も自己責任だという露骨な新自由主義の立場を表明していることを批判しました。橋下流の教育改革は、格差の拡大と固定化をもたらすものであり、阻止することを訴えられました。
 野田正彰さん(関西学院大学教授)は、橋下市長が、他者と対話をしながら意見を取り入れるのではなく、反対意見を徹底して排除する姿勢を厳しく批判されました。他方で、教師集団に対する国民感情として、自身を競争に追い立てた存在として屈折した像を持っており、そうした像が教組バッシングによって煽られる根底にあると指摘されました。
 香山リカさん(精神科医)は、教育基本条例案の導入によって、教育が市場化され、競争原理が導入されることへの疑問を示し、競争に追いやられている生徒・児童の精神的負担の解消にこそ、教育現場がとりくむべきであると訴えられました。
 佐藤学さん(東京大学教授)は、大阪の教育が抱える困難に教師、保護者、行政がどうとりくむのかが問われており、あらためて教育と民主主義の結合の重要性を訴えました。教育基本条例案に対しては、これに反対する運動が大きな広がりを示し、文部科学省も違法とする見解を発表し、最高裁も機械的な処分を違法とする判断を示すなど、大阪維新の会側も違法な条項を改めることを余儀なくされていることを明らかにされました。教育基本計画を首長が決定権限を有するという画策を打ち破り、条例案を廃案にする最後の攻防に立ち上がることを呼びかけられました。
 シンポでは、参加者各人による発言のほか、平松邦夫・前市長などからのメッセージも読み上げられました。
 この間の教育基本条例案など大阪の公教育を破壊する大阪維新の会の動きに対しては、各地でも、積極的に署名、街頭宣伝、集会などがとりくまれ、局面を変えつつあります。府議会での廃案、市会での提出阻止に向け、引き続き、運動を強めていきましょう。

アラブの春~世界に投げかけたもの 世界の民主化運動に学ぶシリーズ第2回

弁護士 中 西   基

  1. はじめに
     2月1日に、民法協・国際交流委員会の主催する学習会「世界の民主化運動に学ぶシリーズ『アラブの春~世界に投げかけたもの』」を開催しました。今回から「市民社会フォーラム」の協賛を得て実施しており、民法協の企画に初めて参加していただく方もいらっしゃいました。参加者は32名でした。
  2. エジプトの「1月25日革命」
     2010年12月にチュニジアで始まった民主化を求める市民のデモは、2011年1月25日には、エジプトに飛び火しました。
     初めは、首都カイロのタハリール広場に数千人の市民が座り込みを始めました。翌日26日には治安当局に強制排除されました。28日は金曜日。毎週金曜日の正午にはイスラム教徒はモスクに集まる金曜礼拝が行われます。そこで集まった多くの市民がそのまま反政府デモに発展することを恐れたムバラク政権は、28日午前0時からすべてのインターネットと携帯電話網を遮断しました。前日27日にはツイッター上で大規模な反政府デモが呼びかけられていたことから、事前に政権側が押さえ込みにかかったのです。夕方からは主要都市で夜間外出禁止令が出され、街頭には軍隊が出動しました。それでも、多くの市民が「ムバラク退陣!」を叫んで路上でデモを繰り広げました。連日のように、タハリール広場には10万人から20万人の市民が詰めかけ、口々に「ムバラク退陣」を求めました。そして2月4日金曜日、正午からの金曜礼拝を終えた市民らが続々とタハリール広場に集まり、その数は100万人を超えました。ムバラク退陣を求める市民のデモはエジプト全土に広がり、ついに、2月11日、ムバラク大統領は退陣を表明しました。歓喜の声に包まれたタハリール広場の様子はYou Tubeなどを通じて全世界中に配信されました。
     民主化を求める市民のデモが、アラブ世界の中でももっとも盤石と思われていたエジプトのムバラク政権を打倒したこの出来事は、デモが始まった日をとって「1月25日革命」と呼ばれています。
  3. 1月25日革命の背景にあるもの
     1981年から30年も長期政権を維持してきたムバラク大統領のもとで、エジプト社会には抑圧(権威主義体制、言論統制、弾圧)と腐敗(歪んだ新自由主義、貧富の格差、貧困層の増大)が蔓延していました。これに対して、若者世代を中心として「社会的公正」を求める声が高まり、彼らが市民デモの中心を担いました。
     若者たちの運動の原点になったのは、2008年4月6日にエジプト北部のマッハラ市で起きた織物工場の労働者から始まった大規模なストライキと反政府デモでした。このとき、労働者に連帯した若者たちが運動に立ち上がりました。この運動は「4月6日運動」(6th of april youth movement)と呼ばれています。この時の運動は、結果的には政府に弾圧されて失敗に終わってしまいましたが、「4月6日運動」に参加した若い活動家たちは、その後、セルビアでミロシェビッチ政権を倒した学生運動組織(「オトポール」)の活動家たちに市民運動のノウハウを学び、腐敗したムバラク政権に対する反対運動を持続してきました。彼らの運動が「1月25日革命」の成功に大きな影響を与えています。
     若い活動家たちは、事前に入念な打ち合わせをし、「ムバラク大統領の退陣」という共通の目標を設定しました。また、既存の政治勢力とは一線を画しつつ、既存の政治勢力とも大同団結を目指しました。さらには、徹底的に非暴力・平和的な運動に徹しました。
     エジプトの1月25日革命の背景にある以上のような状況に関しては、英語版アルジャジーラの番組「Seeds of Revolution」(革命の種)が詳しいです。You Tubeで見ることができます(英語です)。
    http://www.youtube.com/watch?v=BSZ7Ln5KzRU
  4. 私たちの運動にどう活かすか
     「アラブの春」の成功には、私たちの運動に学ぶべき点がいくつかあります。
     例えば、①市民の生活実感に根ざした不満を引き出すこと、②多くの市民が共感できる共通の課題(敵)をわかりやすく提示すること、③既存の政治勢力・党派とは一線を画して市民ひとりひとりが主人公になって運動すること、④非暴力・平和的な運動に徹すること等々。これらの点は、スペインでの「  M」運動やアメリカでの「Occupy Wall Street」運動とも共通している特徴です。また、日本の脱原発運動とも共通しているところが多いと思います。
     これらの特徴を踏まえて、私たちの運動のあり方を検証してみる必要があるのではないでしょうか。
  5. 講師の石黒先生
     今回の学習会の講師は、神戸大学のポスドクの石黒大岳さんでした。
     面識がまったくないまま、いきなり研究室にお電話して、講師をお願いしたところ、こころよくお引き受け下さいました。とてもまじめで誠実な研究者でした。二次会にも最後までおつきあい頂きました。ありがとうございました!
     石黒先生も執筆されている『アラブ民衆革命を考える』(国書刊行会)、お勧めです!

 

 

 

今こそ、正規社員と非正規社員が結束し、「労働者」の権利を守る活動を!

弁護士 中 峯  将 文

  1. はじめに
     民法協・派遣労働研究会では、2012年1月31日と2月8日に、ネクストライ労働組合との懇談会を開催した。
     2011年2月1日に、よみうりテレビの関連子会社が合併してネクストライが設立されたことに伴い、旧映像企画労働組合を中心とした、ネクストライ労組が結成され、過半数労働組合となった。しかし、結成後間もないので、組合員の法律知識、活動のノウハウを培うことが急務である。
     民放労連ytv労組の平岡さんから、ネクストライ社員は、ネクストライから不当な労働条件を強いられていることさえ認識できていない状況であることを聞き、今回、実態調査を兼ねて懇談会を開催するに至ったものである。
  2. 1度目の懇談会
     1月31日の懇談会では、まず長瀬信明弁護士が派遣法の概要を実際の事件の紹介を交えながら講義し、続いてネクストライの社員が職場の実態を語った。
     ある方は、「ネクストライに派遣登録して、よみうりテレビで働いている。これまではフリーのカメラアシスタントとして読売テレビと契約していたが、これからはネクストライに派遣登録してもらわなければならなくなったと言われ、言われるままに登録した。」と言い、「番組1本単位の賃金が1日単位の賃金に変更された。しかも1日に何本撮影しようが額は変わらない。1日1本と言われ契約書に判を押したが、実際には、2本以上入れられた。よみうりテレビは番組2本分で注文しているが、ネクストライは1人だけ派遣することで労働者に支払う賃金を抑えようという魂胆だ。抗議をしたが、「契約書に判を押したのだから問題ない。」と言われた。抗議をしてからというもの、仕事を減らされ、このままでは生活がままならない状態だ。契約書は交付されなかった。後でコピーを見たら、そこには、日給制で給料には深夜・時間外手当を含むと記載されていた。」と窮状を述べた。
     ある方は、「これまでは、よみうりテレビさんで一緒に働かせてもらえるだけで満足だった。正社員の方は厳しい試験を経て入られて、一方、私は派遣社員として働いているのだから賃金に差があるのは仕方がないと思っていた。でも、去年の年末から突然、会社の経費を削減しなければならないからと仕事を半分に減らされた。ネクストライから支払われる給料ではとても生活ができない。会社の都合で生活が変えられても訴える術がなく悔しく思っていた。この懇談会の話を聞き、悔しいと感じるのは私がわがままなだけなのかと聞きたくて参加した。」と語った。
     また、ある方は、「技術カメラマンをしており、ネクストライの正社員である。現在、ネクストライからよみうりテレビに常駐して働いている。仕事の内容はよみうりテレビの正社員と変わらず、シフト管理もよみうりテレビが行っている。しかし、賃金は番組単位で派遣されていた頃と変わらない。よみうりテレビでの仕事だけでは生活が苦しいので、よみうりテレビの仕事が休みの時には、ネクストライから他の会社に派遣してもらっている。」と語った。
  3. 2度目の懇談会
     日を置かず2回目の懇談をすることになり、2月8日に懇談会が催された。この日は、私が労働基準法の概要について講義し、次いで、村田浩治弁護士が労働組合の意義について語った。
     その後、ネクストライ労働組合員の方から、現在労働条件の変更を会社側から持ちかけられており、応じなければならないかという質問があった。 
  4. 調査で判明した労働者の労働条件の実態
     参加した社員は、みな夢を持ってよみうりテレビで働いている。ネクストライやよみうりテレビは、その純粋な思いを逆手にとって労働者を安く使おうとしている。このような暴挙を許してはならない。
     何よりも問題と感じたのは、派遣制度を利用することで合法的に労働者の人件費を下げられることである。調査で判明したような、常駐派遣社員がよみうりテレビでの仕事だけで生活できない実態、登録型派遣では最低保証がなく会社の都合で仕事を増減させられるという実態は、現在の派遣制度がいかに悪用されているかを浮き彫りにしている。
     労働基準法や派遣法等現在の労働法制が不完全な中、労働者の地位を上げる強力なツールが労働組合の交渉である。正社員と非正規社員が団結して交渉に当たらなければならない。
  5. 今後の取り組み
     ネクストライの行動からは、労働組合が結成して間もない今のうちに社員の労働条件を不利益に変更しようとする意図が読み取れる。このような暴挙を許してはならない。そのために派遣労働研究会ではできる限りのサポートをするつもりである。
     3月5日には、読売テレビ大阪本社内にて、法律相談を予定している。今後も労組法の講義を予定しており、今後継続してytv労組およびネクストライ労組と関わりを持っていきたい。
  6. 後日談
     後日、私はytv労組の組合員の方と昼食を共にする機会を持った。懇談会に参加してくれていた方も来てくれており、ytv労組とネクストライ労組の両方に入ることを決めたということであった。懇談会を開いたことで、一人でも新たに労働組合に参加しようと決意してくれたことはこの上ない喜びである。

書籍紹介『問われる正義  大阪・泉南アスベスト国倍訴訟の焦点』

 評者・弁護士 松 丸   正

大阪じん肺アスベスト弁護団 編
かもがわブックレット
600円+税

 平成23年8月25日午後2時、大阪高裁(三浦潤裁判長)は、泉南地域でかつてアスベスト製造の事業所で働いていた労働者や地域住民に対する国の賠償責任を認めた大阪地裁判決を取消し、逆転敗訴の判決を下した。
 「問われる正義」と題したこの書は、泉南地域のアスベスト被害の歴史を明らかにするなかで、「戦前から石綿の危険性を『知っていた』、やろうと思えば必要な規制や対策が『できた』、でも産業の発展を優先し、それを『やらなかった』、この歴史的真実とそれを否定した高裁判決の不当性」(同事件弁護団長芝原明夫氏の言)を鋭くえぐった書である。
 この書で「問われる正義」とは何か、国に問われるべきは生命・健康は最も尊重されるべきであるという当たり前の正義か、工業技術の発達や産業社会の発展のためには生命・健康が犠牲になってもやむを得ないという産業発展の正義(利益)か、との問いかけである。
 同様の問いかけは、過労死・過労自殺についての企業責任の損害賠償事件でもなされている。大学を新卒で東証一部上場会社である大庄が経営する日本海庄や石山駅店で働いていた青年が過労死した事件では、会社のみならず社長ら取締役の個人責任も追及した。会社や社長らは、企業競争のなかで社員にいかなる働き方をさせるかは企業利益を追及するなかでの経営判断の問題と主張した。これに対し大阪高裁は平成23年5月25日、「責任感のある誠実な経営者であれば自社の労働者の至高の法益である生命・健康を損なうことがないような体制を構築し、長時間勤務による過重労働を抑制する措置を採る義務があることは自明」であるとして、会社のみならず社長ら取締役の個人責任も認めている。「至高の法益」という言葉からは、企業利益を優先し労働者の命と健康をないがしろにする労働現場に対する危機感さえ伝わってくる。
 アスベスト被害についても、過労死・過労自殺についても、生命・健康は最も尊重されるべき至高の法益なのか、企業や産業の利益という判断からは受忍せざるを得ない法益にとどまるのか、いずれの正義の立場に立つかによって判決の判断は決定される。原告勝訴の地裁判決は前者の立場、そして高裁の逆転判決は後者の立場で下された判決と言えよう。
 この書では、この裁判の最大のポイントは、国が局所排気装置の設置の義務づけを昭和30年代前半になすべきであったか否かと述べている。高裁判決は、「実用的な工学的知見」が確立、普及しておらず、コスト面から事業主が導入に積極的でなかったこと等をあげて国の責任を否定している。しかし、国は戦前からアスベストの生命・健康に対する危険性を認識していたのである。生命・健康は最も尊重されるべきであったにも拘らず、その対策を国がとらなかった責任について、「国は知っていた! できた! でもやらなかった」と端的に述べるとともに、歴史的な事実を克明に追うなかで国の責任を解明している。
 アスベスト被害は戦前から発生した古くからの問題であるとともに、将来においても命と健康の被害がより顕在化する問題である。アスベスト国賠訴訟は、最高裁での審理が続いている。この訴訟に勝訴することは、原告や、日本にとどまらず、世界のアスベスト消費量の半分以上となっているアジア諸国における被害の拡大の防止と、必要な救済・補償制度の確立に貢献するという国際的な役割を果たすものとこの書は結んでいる。
 私たちは今、過労死防止法の制定に向けての100万人署名に取り組んでいるが、この訴訟で勝訴し「命と健康は至高の法益」との正義を実現することは、この防止法の制定にとっても大きな後押しとなることを期待している。(書評でなく、弁護団への応援歌となったことをご容赦下さい。)

書籍紹介『自治体ポピュリズムを問う 大阪維新改革・河村流減税の投げかけるもの』

評者・弁護士 河 村   学

榊原秀訓 編著
自治体研究社 発行
2400円+税

  1.  本書では、橋下大阪市長や河村名古屋市長が行う手法や政策の問題点が検討されている。全7章の論考は独立して分担執筆されており、それぞれのテーマでの現時点でのまとまった論考としては最良のものとなっている。とりわけ橋下大阪市長・大阪維新の会の手法や政策の問題点、その背景、運動の要点等を議論し検討している民法協会員にとっては、まことに時宜を得たものであり、「大阪問題」を考えるにあたっての必携の書といえる。なお、テーマ及び執筆者は以下のとおりである。
     ・自治体ポピュリズムの憲法政治―プレビシットと民意―(植松健一)
     ・ポピュリズム首長と議会・住民参加(榊原秀訓)
     ・国会と地方議会の改革のゆくえ(小沢隆一)
     ・大阪都構想と「国家改造」(森裕之)
     ・大阪府「職員基本条例」の法的問題点(城塚健之)
     ・大阪における「国家起立斉唱強制条例」と「教育基本条例案」の法的検討(丹羽徹)
     ・名古屋市の「河村流減税」の検証(山田明)
  2.  本書の一つの特徴は、自治体ポピュリズムの背景や問題点を明らかにしつつも、それに留まることなく、現行制度や実態のかかえる矛盾や問題点にも向き合い、その運用のあり方や制度的な解決方向も示唆している点である。例えば、1章では、現行地方自治法が採用する二元代表制は「実は運用難度の高い制度」とし、「議会優位の二元代表制」として把握することを含め、首長と議会の関係をどう位置づけるべきか検討が進められている。また、1章・2章では、「直接民主制のリスク」についても言及がなされるとともに、ポピュリズム首長が、政策に対しては「積極的な(住民)参加制度を採用していない」ことを指摘し、住民参加制度のありようについても検討が加えられている。さらに、3章では、衆院比例定数削減の問題にも言及しながら、地方議会の議員数や議員報酬をどう考えるべきかの検討がなされている。
     いずれも、あるべき制度を検討し、市民・府民に共感を広げる運動を行うために避けてはとおれない課題であるといえる。
  3.  もう一つの特徴は、政策部分にかかわる論考では、政策の問題点が、網羅的に、その理由を詳しく述べながら論じられている点である。4章では、大阪都構想が住民のために使われるべき財源を大阪都が吸い上げてしまう制度であることが具体的な数字をもって明らかにされている。5章では、法律にも違反して公務員組織を知事の「私兵集団」にする条例であることが暴露されている。6章では、各条例は戦後教育のあり方を根底から覆えすものであること、教育を政治に従わせ、学校を財界のための人材を作り出す「工場」に変容させるものであることが、多面的な角度から論証されている。さらに7章では、河村減税が、名古屋市の財政に与えた悪影響や、これをテコにかえって住民の利益に反する施策が進行している事態が暴露されている。
     いずれも、市民・府民との対話や運動への確信をもつために必要な知識・理論であるといえる。
  4.  本書では、随所に、自治体ポピュリズムの背景・手法と、ナチス・ヒトラーのそれとの類似性が指摘されている。「「ワイマールの悲劇」という歴史を喚起させる」こと自身が、自治体ポピュリズムの「決断主義」に抗するために必要とさえ述べられている。
     ナチスの台頭は、社民=リベラル派政権の掲げる政策がご破算になっていく失望と、政争に明け暮れる議会・政党政治家への不信を背景にしたものであり、「現在の日本の閉塞状況こそ、ナチス登場前夜の雰囲気に重なる」というのである。
     歴史に学びながら、自由と民主主義の意義を喚起する作業もまた必要である。
     なお、ナチスの歴史とその宣伝が国民に与えた影響については、「写真・ポスターに見るナチス宣伝術」(鳥飼行博著。青弓社)が詳しい。

*本書において、「ポピュリズム」とは、「政治的再配分による支持調達という側面がないまま、問題の単純化と二項対立式の敵の設定をもって有権者の感情に訴えかけ、新自由主義の犠牲となる層からも支持を調達する」政治手法を指し、「自治体ポピュリズム」とは、このような支持調達を、「自治体住民の生活実感や「地域」・「地方」への愛着」を利用して行う政治手法を指すようである。ただ表題として判りにくいのは残念である。

 〈民法協でお求めいただけます。〉