民主法律時報

2011年9月号

若年労働者の過労自殺事案・民事損害賠償事件提訴のご報告

弁護士 上 出 恭子

  1. 事案の概要
     Kさんは、昭和55年生まれで、いわゆる「ロストジェネレーション」と呼ばれる時期にあたる平成15年3月に大学卒業後、思うような就職先が見つからず、アルバイトを続けていた。平成20年4月、コカ・コーラ商品の自動販売機オペレーションを行う関西ビバレッジサービス(株)の下請業者である日東フルライン(株)に正社員として入社し、トラックに乗って自動販売機に缶ジュース等の飲料水を格納する作業に従事するようになった。
     当初、先輩従業員に同乗して住之江地区を回っていたが、6月の末に急遽、全く別の大正地区を担当することになり、先輩従業員が大正地区の担当者から約1週間の引き継ぎを行い、その後、約1週間、先輩従業員と同乗して大正地区を回った後、7月半ばから、一人で大正地区を担当することになった。
     それ以前からも早朝6時前には家を出て、大阪市港区にある事業所に7時前には到着をして始業し、会社を出るのは早くても8時ごろという、実労働が12時間前後の勤務に従事していたが、7月に入ってからは、慣れない地区の自動販売機がどこにあるのかを確認したり、翌日の荷物の準備をするため等に、自宅に戻る時間は11時前後となり、帰宅時間が12時を回ることもあった。会社の勤務表を元にした、死亡前日からの1か月間の時間外労働時間は100時間を超えていた。
     長時間過密労働の他、先輩従業員から仕事に慣れないKさんに対し、「馬鹿、アホ、のろま」「殺すぞ」等の暴言が恒常的にはかれていた。
     8月2日の早朝、いつもであれば起きてくるはずのKさんが起きてこないのでおかしいと思った家族が、Kさんの部屋を確認すると、死亡しているKさんを発見をした。
     仕事しか原因が考えようのないということでご家族は、Kさんの死亡後すぐに地元の労働組合を通じて、当事務所に相談に来られ、Kさんの労働実態について、ご遺族自ら、会社に数度に亘って聞き取りに行かれるなどして調査を進め、平成21年4月に労災申請を行い、同22年6月、労災認定がなされた。
     なお、労災の手続きの関係では、労災保険の支給額の根拠となる「給付基礎日額」にKさんの不払残業代が考慮されていないとのことで、審査請求を行い、一定額について考慮すべきとの判断がなされたものの、労働保険審査官の判断に基づく労基署の支給決定が不十分なものであったことから、現在、再度、審査請求を行っている。
  2. 損害賠償請求の提訴
     本来、新人には3か月の研修期間が設定され、その間に、飲料水の格納作業の基本や、取り扱う機械の仕組みを理解をして、配送先の自動販売機の設置場所を把握することされていた。
     しかし、本件では、Kさんが勤務を初めて約2か月の間、回っていた住之江地区ではなく、突如として全く別の大正地区をわずか1週間の引き継ぎ期間で担当することとなった。その背景には、複数の請負業者の従業員が発注者である関西ビバレッジサービス(株)から指揮命令を受けるという「違法派遣」状態を解消するという事態があったものと推測されるが、7月という、飲料水の販売量が格段に伸びる繁忙期に引き継ぎ期間もきわめて短期な中で、新人従業員のKさんにとっての業務による心理的負荷は多大なものであった。
     会社には、各従業員がその日一日のコメントを書く日報のようなものがあったが、Kさんは亡くなる直前の7月26日、「倒れそうです。」と書き残し、それを見た、上司の押印がなされている。 
     労災認定を受けて、ご遺族は代理人を通じて、謝罪と法的責任を求める旨の通知を送ったが、会社は代理人を通じて会社には責任がないとして応じないとの返答を行った。
     Kさんのご遺族は、会社の責任追及だけでなく、なぜ、真面目に懸命に働いた息子がこのような死に方をしなければならなかったのかを明らかにしたいとの思いで、平成23年9月7日に大阪地方裁判所に提訴をした。
      今後、法廷傍聴のお願いを等させていただくことがあろうかと思いますが、ご支援をお願いします。

    (弁護団は、岩城穣弁護士、須井康雄弁護士と上出)

阪神バス事件―障害者の労働条件に関する「合理的配慮」の廃止を争う

弁護士 立 野 嘉 英

  1. 事案の概要
     A氏(43歳)は、1992年に阪神電気鉄道株式会社(以下、「阪神電鉄」)に入社し、バス事業部門で一貫して勤務してきたベテランのバス運転手である。ところが、1997年に受けた「腰椎椎間板ヘルニア」の手術の後遺症で「神経因性膀胱直腸障害」で「排尿・排便異常」の身体障害が残った。この障害は、排尿や排便を自分の意思でコントロールすることができず、下剤を服用するなどして数時間をかけて強制的に排便するなどが必要なものである。
     当時阪神電鉄には「勤務配慮」という制度があった。これは、心身の状況や家庭の事情等によって、決められた労働条件に従って勤務するのが困難な労働者について、本人からの申し出を受けて個別協議を行い、勤務に支障が生じないように必要な配慮を行う制度である。
     A氏はこの制度を利用して会社と協議を行い、①乗務は午後からとする、②時間外労働は避ける、③前日の勤務終了から翌日の勤務開始までの間隔を14時間、最短でも12時間以上空けることとする、という「勤務配慮」を受けてきた。
     ところが、2009年、バス事業部門が分社化され、従前からあった阪神バスに統合されたが、その際、阪神電鉄・同社労組、阪神バス・同社労組の「4者協議に関する合意書」で、「勤務配慮は原則として認めない」とされた。
     A氏は2009年4月に阪神バスに移籍したが、勤務配慮はしばらく続けられたものの、2011年1月から「勤務配慮を廃止して、通常の勤務シフトで勤務させる」と一方的に通告され、実行された。
     その結果、A氏は勤務時間に合わせた排便コントロールが全くできなくなり、2010年1月~12月の1年間で当日欠勤(欠勤扱い)は0回、当日欠勤(年休扱い)は4回のみであったのが、2011年1月だけで当日欠勤(欠勤扱い)3回、2月は6回、3月は8回に及ぶことになった。このような状況では、今後、解雇されたり退職せざるを得なくなることは明らかである。
     A氏は、2011年3月4日、神戸地方裁判所尼崎支部に通常シフト(ローテーション)での勤務を行う義務のないことの確認を求める仮処分命令申立を行ったが、会社は「勤務配慮は温情的措置にすぎず、労働条件ではない」「勤務配慮を無制限に続けることは、乗務員間の公平感を損ない、ひいてはバス事業の正常な運営に支障を来す」と主張して争ったため、同年8月4日、仮処分事件は来年3月まで勤務配慮を延長することで和解し、訴訟によって解決することとなった。
     そして、2011年8月26日、A氏は、勤務配慮制度に基づく協議によって定まった内容以外の勤務シフトによって勤務する義務のないことの確認を求めて、神戸地方裁判所尼崎支部に提訴した。
  2. 障害者権利条約とその国内法化をめぐる情勢
     身体・精神に長期的な障害がある人への差別撤廃・社会参加促進のため、障害者権利条約が2006年に国連総会で採択された。そこでは、障害に基づく差別を、①直接差別、②間接差別、③合理的配慮の欠如の3類型として禁止している。
     2011年3月現在の批准国は99か国である。日本はまだ批准していないが、2007年9月に署名し、現在国内法を整備して批准に向けた準備が進められている段階である。
     また、仮に条約の批准前であっても、日本国憲法14条1項は「法の下の平等」を定めて差別を禁止しており、上記のような差別類型は、私人間においても禁止することが既に国際的に承認されているのであるから、違法というべきである。
  3. 「勤務配慮」の一方的廃止は障害に基づく差別に該当する
     障害者権利条約においては、障害の定義につき、「障害者には、長期の身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害を有する者であって、様々な障壁との相互作用により他の者と平等に社会に完全かつ効果的に参加することを妨げられることのあるものを含む」(同条約第1条後段)とされており、「神経因性膀胱直腸障害」により排尿や排便を自己の意思でコントロールすることが不可能なA氏の身体障害が同条約においてそれに基づく差別が禁止されているところの「障害」に該当することは明らかである。
     また、本件における「勤務配慮」は、結果として前記の「合理的配慮」に当たるものであり、これを廃止することは、障害者権利条約が禁止している差別に該当する。この点、「障害のあるアメリカ人法」(ADA)のガイドラインにおいても、「事業主は、合理的配慮として過剰な負担とならない限り、また他の従業員にはそのような措置が取られない場合でも、必要な場合には勤務時間を変更する、もしくはパートタイムにしなければならない。」とされている。
     会社は、乗務員間の不公平感を主張するが、阪神バスには370人もの運転手が在籍しており、これまで支障なく事業を運営してきたのであるから、過度な負担では決してない。
  4. 今こそ障害者の労働分野における権利確立に向けた議論・取り組みを
     日本では、障害者雇用促進法など障害者の雇用機会確保という観点からの議論はなされてきたが、障害者の適切で公正な労働条件といった観点からは実質的な議論があまり展開されてこなかったように思う。
     しかし、言うまでもなく、たとえ雇用がなされたとしても、労働条件において直接・間接の差別を受けたり、合理的配慮を受けられなければ、仕事を続けることすら困難になるのであり、真に障害者の権利が実現できたことにはならない。
     日本における障害者の労働条件に対する国の政策・企業における実際の取り扱いは、欧米と比較しても極めて後進的であり、その背景には「障害」に対する理解の欠如・不十分さがあるように思われる。
     日本は、現在、障害者権利条約の批准に向けて国内法を整備している段階であるが、いかなる立法・制度内容となるのか、それが障害者の権利実現にとって真に実効性があるものなのか注視すると共に、障害者の労働問題についての議論を深めて積極的に制度設計の議論に加わっていく必要があるように思う。

    (弁護団は、岩城穣、中西基、立野嘉英)

空の安全は?乗客サービスは? 働く人の生活は? 「JAL“再建”1年の検証」シンポジウムを開催

国土交通労働組合西日本航空支部 河 村  裕 治

 昨年1月にJALが経営破綻し、8月に更生計画案を東京地裁に提出してから1年となる事から、民主法律協会関空プロジェクト会議では、JAL不当解雇撤回をめざす大阪支援共闘会議の協賛を得て、8月30日(火)「いきいきエイジングセンター」で約100人が参加したシンポジウムを開催しました。昨年9月に「関西の空を考える」シンポジウムを開催してから1年ぶりのこのシンポジウムでは、165名もの乗員、客室乗務員を不当解雇し更生計画を大幅に上回る営業利益を出したJALが果たして本当の意味で「再建」しているかを航空職場からの告発により検証しました。

 最初に、ご自身もJALを解雇されたパイロットである航空労組連絡会事務局次長の和波宏明さんから、昨年12月31日の不当解雇からの解雇撤回闘争の経緯が説明されました。その中で、JALの営業利益は更生計画の目標を大幅に上回り超優良企業に急速に変貌したが、地方の不採算路線や機材の小型化で座席数を相当削り、乗りたいときに乗れない航空会社になってしまったこと、「整理解雇の4要件」を全く無視した解雇であること、そもそもJAL破綻の原因が放漫・乱脈経営や航空行政の誤りなどであること、「利益なくして安全なし」といった体制になってしまったJALでは、ありえない基本的間違いがいっぱい起きていると指摘しました。そして、今回の解雇撤回裁判を、労働対資本、安全対利益の闘いと位置づけ、経営者の態度を改めさせ、安全と公共性を最優先とするJALの再生を目指すために被解雇者のみならず、希望退職した人も呼び戻し、適正な事業拡張をすべきとし、来年のいい報告と今後の展望を語れることを楽しみにしていると結びました。

 次に弁護士の方々による寸劇「悪玉三者会談」では、某会社の密室で行われた職員解雇へ向けての話し合いを本物のビールを飲みながら絶妙の間合いで演じられ、CCU(キャビンクルーユニオン)を「キャンキャンうるさい」「ちょろちょろうるさい」、御用組合を「岡っ引き」(御用だ御用だ)と表現するなど会場の笑いを誘っていました。そして、むぎもり会長は「会社とは宗教みたいなもの、むぎもり教の信者になればいいのだよ。儲かる会社、儲かるという漢字をよく見ると信者だろう」といった落ちで幕となりました。

 職場からの訴えでは弁護士の梅田章二さんを進行役に、全日空乗員組合からはJALの経営破たんについて全日空では、航空会社は簡単につぶれるといった危機感があり、累損を一掃し強靭な体力で市場に戻ってくるJALや、外国航空会社、LCCと呼ばれる格安航空会社との競争に負ければ市場からの退場を余儀なくされるため、生産構造の改革と称して乗員の乗務時間を延ばし、今いる人間で利益を上げようと、とにかく我慢といった風潮が広がっているとの報告がありました。
 客室乗務員からは、現在のJALはもの言えぬ職場になり、チームワークで仕事ができず、チーフパーサーが立ったまま着陸したり、ドアモードの変更を忘れたり、お湯、コーヒーの乗ったカートが客室に飛び出すといった事象が多数起きており、アンケートを取ったところ事案を報告せずもみ消しもあるとの指摘がありました。
 整備の安全問題では、最近信じられないミスがあり、貨物ドアを開けたまま出発しそうになったケース、離陸してからパイロットが脚を上げる作業をしても上がらず、原因が安全ピンの抜き忘れであったケースが紹介されるとともに賃金カットが続き、将来性見えないことから職場でのモラル低下があると訴えました。
 貨物や手荷物の運搬、掃除を受け持つグランドハンドリングの職場では、27歳で手取り15万円、40代20万円ほどの賃金で毎日の生活が苦しく、今までためてきた貯金の取り崩し、車などを売って生活している実態や、職場での教育不足で4月以降53件のイレギュラー、人身事故があったとの生々しい現場の報告がありました。
 不当解雇撤回裁判原告からは、裁判闘争のスケジュール報告ともに署名、物品販売、支える会の申し込みのお願いがあり、最後に航空連大阪地連議長の加藤常雄さんから、JALの破たんと再建に大きな問題点があったとの認識を示すとともに、経営はコスト削減に汲々としており、安全軽視の姿勢を許すことはできない。おかしいと思う感覚を持ち続け、声を出して経営に対抗する必要があるとのあいさつで閉会しました。
 2時間の予定を大幅に延長するシンポジウムとなりましたが、報道では伝わらないJALの安全に対する危うさを現場の生の声から感じることができ、この会社を真に再建するためには、経験がありものを言う職員を職場復帰させることが非常に重要だということを、改めて認識したシンポジウムとなりました。

「教育基本条例案」「職員基本条例案」を許さない9.6府民集会報告―さらなる公教育破壊と強権政治を許さないために2条例は撤回しかありません

 大阪教職員組合副委員長 末 光  章 浩

 9月6日(火)エルおおさか大ホールで、標記府民集会が教育文化府民会議、民法協、大教組など8団体の主催で開催されました。当日は、チラシや新聞、インターネットで知った府民がかけつけ、用意した資料1000部がなくなり、ロビーにまで溢れるほどの人で埋め尽くされました。集会は2条例撤回を求める熱気と橋下「大阪維新の会」の横暴への怒りに満ちた素晴らしい内容で、当日マスコミ二社のテレビカメラも入り関心の高さをあらわしていました。

 集会は大阪教職員組合女性部の寸劇「うちら大阪の先生やで」ではじまり、主催者を代表して子どもと教育・文化を守る府民会議代表の藤木邦顕弁護士が「子どもたちを競争に駆りたて、懲戒処分で教師や職員を黙らせ、命令や知事が設定する教育目標に従わねば教育委員も罷免する。こんな条例が日本に制定されていいのでしょうか。条例阻止へ力をあわせましょう」とあいさつしました。

 各界からの激励のあいさつでは元小学校PTA会長の渡鍋一也さんが「私たちが求めているのは、点数や競争で子どもたちを追いたてる先生ではなく、一人ひとりを大切にし、子どもたちの声に耳を傾けてくれる先生です。教育基本条例はきっぱりやめていただきたい」と思いを語りました。大阪弁護士会憲法問題特別委員会委員長の武村二三夫さんは「同じ職務命令3回違反、職務命令違反5回で分限免職というのは本当かと、弁護士会のなかで驚きの声があがっています。中立性、自主性の観点から、行政、議会とは独立して一定の権限が行使できる教育委員会制度があります。橋下知事はそれを壊しにかかり、ものが言えない職場をつくりだそうとしています。ファッショじゃないか、ものが言えない社会に大阪をかえようとしているのではないかと思います。大阪の地で、われわれが知事の暴走を止めなきゃなりません。この集会も一歩、一緒にがんばりましょう。」と述べました。全日本教職員組合中央執行副委員長の篠崎四郎さんは「橋下知事による地方からの教育支配を突破口に地方自治のしくみを根本から変えることをねらった策動を阻止しよう」と訴えました。

 続いて東京大学名誉教授で元日本教育学会会長の堀尾輝久さんが「教育に強制はなじまない」と題して講演、「橋下知事は『君が代』起立強制条例を成立させ、今度は2条例案をつくりました。この流れはこれまでの日本の保守的な流れとは違った特徴があり、議会政治の否定や教員・府職員への自由抑圧を通じた新しいファシズムへの動きではないかと心配です。『2条例は条例に反するいっさいの条例、規則、要項などは無効』として、『最高規範性』を持つといいます。よくもこういう表現を使いますね。最高規範というと私たちが考えるのは憲法で、知事自身が憲法を変えたいと思っているのでしょう。条例案は憲法違反だといわなければなりません」とのべました。

 今回の集会も6月1日の「日の丸・君が代」強制条例に反対する府民集会と同様、各方面からのリレートークの時間が設けられました。
 福井依智子さんは、父母の立場から、「『日の丸・君が代』を強制しないでと学校に申し入れたり、このような集会で発言している私は、教育基本条例案によると『社会通念上、不当な要求』をしている保護者と見なされるのでしょうか?」と条例案の問題点を鋭く指摘、府立高校教諭の首藤広道さんは「私の勤務する困難校の生徒たちも『生きづらさ』を感じ、時には挫折しながらも懸命に自分たちの生き方を模索している。そのような生徒を前に3年連続定員割れした学校は統廃合とは許せない。競争と自己責任を押しつけ、徹底した教職員の統制と管理、公教育の民営化など新自由主義の最先端の条例案に強く反対します」と意志表明しました。
 大学生の織原花子さんは「一人ひとりを大切にする本来あるべき教育を汚されたくはありません」、大阪府公立学校管理職員協議会元会長の佐藤純一さんは「子どもたちに苦しい思いをさせる条例には憤りを感じます。」とともに怒りをあらわにしました。
 リレートークの最後は2条例案撤回の先頭に立って頑張る大阪府職員関係労働組合書記長の小山光冶さんと大阪教職員組合書記長の小林優さんが発言。小山さんの「府民との共同をすすめ、橋下独裁政治から府政を府民にとりもどすため全力をあげます」、小林さんの「公教育をさらに破壊し、強権政治おしすすめる『大阪維新の会』暴走政治を絶対に許してはなりません」の発言に会場から割れんばかりの拍手がありました。

 2条例案撤回にむけた府下の運動は大きく広がり始めています。9月9日は、主要駅頭で8団体や憲法会議・共同センターを中心に撤回を求める宣伝が行われ、昼休みに府庁本館前で8団体が行った宣伝には80名が参加しました。20日の府議会開会日には早朝から宣伝行動、昼休みには教育塔前での反対集会と府庁包囲デモ行進を実施しました。
 9月16日の大阪府教育委員会会議では2条例案に対し、橋下知事が任命した教育委員もふくめ、全員の教育委員から強い反対の意見があがっています。「やってはいけないということをやっている。横暴としかいいようがない。一国民として言うと、政治家として資質が問われている。政治が教育をふりまわすという一番問題なことをしている」、強い要請で就任した「百ます計算」で知られる陰山英男委員は、こう発言しています。橋下「大阪維新の会」への批判が確実に広がりはじめています。教育を私物化し、批判する勢力をすべて排除しながら、意のままに教育や府政をすすめる橋下「大阪維新の会」へ抗議を集中し、府民の力で2条例案を撤回に追い込みましょう。
 激励先は以下の8団体まで。
子どもと教育・文化を守る大阪府民会議/憲法改悪阻止大阪府各界連絡会議/自由法曹団大阪支部/民主法律協会/国民救援会大阪府本部/全大阪労働組合総連合/大阪自治体労働組合総連合/大阪教職員組合

西谷先生「人権としてのディーセント・ワーク」出版記念講演

弁護士 増 田  尚

 西谷敏・大阪市立大学名誉教授が「人権としてのディーセント・ワーク 働きがいのある人間らしい仕事」(旬報社)を出版されたのを記念して、7日、大阪労働者弁護団との共催により、西谷先生による出版記念講演会を開催しました。弁護士や労働組合員など74名が参加しました。
 同著では、1999年ILO報告が提示した「ディーセント・ワーク」を切り口に、現代日本における労働をめぐる書面大を網羅的に論じられており、労働運動のバイブルともいうべき内容になっています。そのキー概念となる「ディーセント・ワーク」について、厚生労働省は、「人々が働きながら生活している間に抱く願望」の集大成であると定義している(初めて知りました!)のに対し、西谷先生は、著作のタイトルにもあるように、何より「人権」としてとらえるべきだと指摘されました。「人権としてのディーセント・ワーク」の含意は、これに反する働かせ方が人権侵害として把握されるところにあり、「セクシュアル・ハラスメント」が労働における性的自由の侵害として広く国民生活に定着したように、労働のあり方を変える可能性を秘めていると示唆されました。
 その上で、ディーセントワークの条件として、①安定した雇用、②公正かつ適切な労働条件、③人間らしい働き方の3つを挙げられました。
 ①安定した雇用の意義については、何よりも労働者の生活保障であり、加えて、「働く」ことそのものが人間にとって意義のある行為であると位置づけ、労働者の権利を保障するために、実体法と法執行の仕組みを検討すべきであると述べられました。この観点から、解雇規制の緩和論を厳しく批判し、有期雇用についても、細切れ雇用、解雇規制の僭脱、労働者の地位の弱体化の3つの理由から、有期雇用とすべき合理的な理由を必要とする独仏のような規制が必要であると指摘されました。
 次に、②公正かつ適切な労働条件として、ヨーロッパ並みの最低賃金(時給1000円)の実現と、労働における差別の撤廃が不可欠であると述べられました。
 また、③人間らしい働き方の確保のためにも、労働時間規制の強化と労働時間時間の短縮の必要性を訴えられました。労働基準法においては、事実上、36協定において、時間外労働時間が青天井にされていることをただちに上限規制を徹底すべきであると述べられました。
 さらに、非正規雇用のあり方が反「ディーセント・ワーク」の典型であると糾弾され、自由な意思に基づいて選択したものではなく、いったん非正規になれば容易に抜け出せず、世代を継承するように固定化され、差別意識が牢固として存するなど、「身分」そのものになっているとの問題点を指摘されました。そのためにも、規制強化により正社員化を推進することや、均等待遇の確立が必要であると述べられました。
 続けて、出版後に生じた東日本大震災の問題にふれ、被災地における雇用保障を公的責任において実施すべきであると同時に、震災復興を口実にした財界の規制緩和要求を厳しく批判し、生活を優先する社会政策への転換を訴えられました。
 最後に、ディーセント・ワークの実現に向けて、法と労働組合の役割について論じられました。労働組合の組織率が低下している上、歪められた「労使自治」によって、ディーセント・ワークの実施が阻まれていた中、立法闘争が重要になっていると説かれました。また、労働組合に対しては、特に、長時間労働を許容する36協定の是正、年休未消化の解消、正規・非正規の格差是正の問題にとりくむことにより、存在意義を発揮するよう要望されました。
 講演終了後は、西谷先生をまじえて、大阪労働者弁護団の事務局との懇親を深めることができました。ディーセント・ワークの実現のために、労働組合、法律家が共同して、立法闘争や労働者の権利向上のとりくみをすすめていく民主法律協会の存在意義がますます重要であることを再認識することができました。

徴税強化、社会保障の削減にストップを・・・「税と社会保障の共通番号制に反対するシンポジウム」を開催しました

弁護士  大  前    治

 2011年9月8日(木)、「税と社会保障の共通番号制に反対するシンポジウム」が開催されました。会場の国労会館に、60名を超える参加者が集まりました。
 シンポジウムに先立ち、坂本団弁護士(日弁連・情報問題委員会副委員長)から、政府が共通番号制を推進する民間団体を作るなどテコ入れに躍起であるとの報告がありました。その後、伊賀興一弁護士(自由法曹団支部長)が進行役となり、各分野のパネラーから発言がありました。

  1. 共通番号制は、社会保障の削減が狙い
     保険医協会の安藤元博さんは、「政府は、『社会保障・税一体改革』をするというが、社会保障費を削減する流れは変えない。そのもとでの共通番号制は、公正な社会保障のためではなく、個人勘定で給付と負担とのバランスをとることによる給付削減が目的」と指摘しました。実際に財界は、年金受給が多かった人の死亡時に「相続財産から給付金を回収する」という方策を検討しているとのことです。
     年金事務所に勤務する竹本光代さん(全厚生労働組合)は、「窓口で、ずっと年金保険料を納めてきたのに年金額が低すぎるという苦情が来る。これは共通番号制によって解決できる問題ではない。」と指摘しました。政府による社会保障費削減が不満や混乱の根本原因であり、共通番号制はその解決にならず、国民により大きい負担と重圧を押し付けるものであると指摘されました。
     吹田市役所で働く原田さん(大阪自治労連)は、「公務員は目の前にいる人を助ける仕事をする。共通番号制がなくても社会保障や福祉の仕事には何ら支障ない。共通番号制が必要とは思わず、むしろ情報の漏えいの可能性など導入への不安が大きい。」と、現場の実感をこめて発言されました。
  2. 低所得者・中小企業へのへの徴税が強化される
     税理士の清家裕さんは、「税制改革」の名による消費税増税や各種の市民むけ控除制度廃止が進められてきた経緯を説明。「これまで税負担を強いられなかった低所得者や中小業者が新たに納税者になっており、滞納者も急増している。」という実態を紹介しました。
     大阪商工団体連合会の稲田顕さんは、「所得」ではなく「売上」に課税される消費税は赤字業者にも容赦なく課税されるため、中小業者が苦しんでいると報告しました。たとえば、年間所得200万円の飲食業者(3人家族)は、消費税36万円、国保・介護保険31万円、さらに年金33万円を負担しなければならず(他に所得税、住民税も)、手元に僅かの金額しか残らないとのことです。消費税が増税されても価格に転嫁するのは難しく、結局は自分の利益を削って負担せざるを得ません。こうした実態を押し付けてきた政府与党による共通番号制度は、決して苦境にある中小業者を助けるものとは思われないと指摘されました。
     その一方で、証券優遇税制や輸出企業の消費税還付などで、大企業や高所得者の負担
    は軽減されています。激増する納税者・滞納者(=一般市民、中小業者)からの徴税強化のために共通番号制が利用され、不公平な税負担が一層助長されることが、各パネラーから指摘されました。
  3. 共通番号制には、さまざまな矛盾がある
     このほか、次のように共通番号制の問題点を指摘する発言が続きました。
     *共通番号制が広く導入されている韓国の社会保障支出は世界最低ランク。これに対し、共通番号制を導入していないフランスは、同支出は高いレベルにある。つまり、決して 「共通番号制を導入している国は福祉水準が高い」とは言えない。
     *共通番号制の導入コストは6000億円。さらに導入後の維持管理費用も膨大。一般市民にとって、これに見合うほど多大な「利便性」は無い。それだけ多額を投じるなら、 直接に社会保障に回した方がよい。
     *買い物のときに納税者番号を言わないと処罰されるような制度も検討されており、共通番号カードのようなものを持っていないと日常生活ができない事態が起こり得る。
     *診療報酬請求制度において医療をめぐる個人情報が流出した実例もある。共通番号制は、より広範かつ細部の情報が収集管理され、その漏洩による被害は重大。
     *外国では他人の共通番号を悪用した「なりすまし」が問題化している
     *震災復興のためにも「税・社会保障一体改革」は必要という論調もある。しかし、税の改革の名による消費税増税が被災者の窮状に追い打ちをかけることは明らか。
     *ドイツ連邦憲法裁判所は、「国が、人間の全人格を強制的に登録させ、索引を付し、あらゆる面から検索できる棚卸商品のように扱うことができると考えることは、人間の尊厳と一致しないであろう」、と述べて、包括的な番号制は違憲と判断している。
     以上のように、共通番号制と一体となった「税・社会保障改革」には重大な問題があることが分かりました。今後、民法協としても引続きこの問題に取り組む予定です。どうぞよろしくお願いします。

日の丸・君が代強制処分条例に反対するつどい

弁護士 笠 松  健 一

  1.  2011年6月3日、大阪府議会で、府の施設での日の丸の掲揚と学校の行事において教職員に君が代の起立・斉唱を義務付ける「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国家の斉唱に関する条例」が、単独過半数を占める「大阪維新の会」によって強行採決されました。そして、維新の会は、9月20日から始まる大阪府議会に、教職員が君が代の起立・斉唱を強制する職務命令に違反した場合の処分を定める条例を提出すると報道されました。私たち大阪弁護士会の有志は、このような維新の会の動きに危機感をもち、2011年7月に、日の丸・君が代強制処分条例に反対する弁護士の会を結成しました。この弁護士の会の代表は児玉憲夫弁護士、事務局長は私です。弁護士の会では、日の丸・君が代強制処分条例に反対するアピールを発表し、大阪弁護士会会員の賛同を求めて活動しています。現在の賛同数は約500人です。また、9月16日(金)に、関西学院大学教授の豊下楢彦さんをお招きして、日の丸・君が代強制処分条例に反対するつどいを開くこととしました。なお、大阪弁護士会も、5月24日には「君が代斉唱時の起立を義務化する大阪府条例に反対する会長声明」を、9月15日には「大阪府教育基本条例の制定に関する会長声明」を、それぞれ発表しています。
  2.  その後、維新の会は、強制処分条例として、「教育基本条例案」と「職員基本条例案」を用意していることが分かりました。特に、教育基本条例案は、ほとんど全ての条文に問題があると言わざるを得ません。主な点を指摘すると、①、職務命令に5回違反するか同じ職務命令に3回違反すると分限免職とされています。つまり、君が代を起立・斉唱しろとする職務命令に3回違反すると分限免職というわけです。また、②、府知事が、府立高校が実現すべき目標を設定し、教育委員会は、知事が定めた目標を実現するため、指針を作成して校長に指示し、校長はその指針を基に学校を運営するとされています。しかも、③、教育委員会の委員が知事の定めた目標を実現する責務を果たさない時は、教育委員を罷免するとされており、府知事が教育行政を支配することになります。そして、④、教育委員会が有する人事権に知事が介入することが可能となります。しかし、これは法律に違反するものです。⑤、教育の基本理念としては、規範意識・義務・自己責任が強調され、愛国心教育を行うことが明記され、国際競争への対応が掲げられています。そして、⑥、大阪府全体を1学区とし、学力テストの結果を公表して全府立高校を序列化します。そうすると、成績の悪い学校は定員割れを起こすことになりますが、3年連続定員割れした高校は統廃合するというのです。⑦、競争は教職員の間にも導入され、校長は教職員を5段階に相対評価し、5パーセントの教職員は最低評価を受け、その評価は給与や任免に反映されることとなります。その他にも重要な問題点がありますが、全体として、今の教育体制を崩壊させるものと言えます。
  3.  9月14日の読売新聞によると、維新の会内部にも強い反対意見があることが報道されています。9月16日には、維新の会と大阪府総務部や大阪府教育委員会とが意見交換をしましたが、条例案に対する批判が噴出しました。橋下知事の肝いりで教育委員になった陰山英男委員も「私やめます。できませんよこんなの」と発言したと報道されています。
  4.  そのような情勢下、9月16日に弁護士の会主催の「日の丸・君が代強制処分条例に反対するつどい」が、中之島公会堂で開かれました。会代表の児玉憲夫弁護士が、会結成の趣旨・目的等を紹介し、現在の情勢も含めて開会のあいさつをしました。私からは、現在の情勢、特にその日に行われた維新の会と教育委員会との意見交換の様子等を報告し、教育基本条例の問題点を指摘しました。豊下楢彦さんは、教育統制のシンボルとしての戦前の「奉安殿」の話から始め、教育基本条例案は形から入ることを強調するものであること、愛国心の強調はエリートの腐敗と結びつくこと、明仁天皇は憲法の遵守を明言したという天皇の立ち位置の話、知事が教育の目標を設定することは教育内容の統制に至ること、権力エリートの無責任さの表れが大阪府庁舎の移転問題であり、橋下知事は、府庁舎咲洲移転問題で府民に1200億円の負担をかけた責任を取るべきだとされました。次に教職員から、現在の高校の状況について報告があり、アメリカから駆けつけてくれた薄井雅子さんから、アメリカでは、国旗への敬礼と「忠誠の誓い」への唱和が憲法に違反するという連邦最高裁判決があること等が紹介されました。そして、元ニュースペーパーのソロコメディアン松元ヒロさんが、コントを演じました。松元さんは、鋭い切れ味で政府や権力者の問題点を指摘しました。最後に集会アピールを採択して閉会しましたが、平日の夜にもかかわらず、約200人の参加者があり、私たちの運動次第で、廃案にできることを確認できる集会でした。