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東通不当労働行為事件府労委勝利命令
ネスレコンフェクショナリー契約社員、解雇・雇止め事件で勝利和解


東通不当労働行為事件府労委勝利命令
弁護士 河村  学

  1. はじめに
     本件は、テレビ放送番組制作会社である株式会社東通(東通)が、労働基準法上の時間外手当等を要求する労働組合(日本民間放送労働組合連合会大阪東通労働組合)の活動を嫌悪し、同手当等を請求する訴訟を行った組合員ら22名を非管理職に降格するなどの不利益取扱をした不当労働行為事件である。
     本件での注目点は、@降格処分が全社的な職位改定の中で実施されたものであること、A不当労働行為のきっかけとなった時間外訴訟が東通とは別の法人を相手方とするものであったこと、B訴訟を行った原告22名の中には非組合員も含まれていたこと、である。

  2. 事案の概要
     組合は、もともと株式会社大阪東通(大阪東通。東通とは別法人)の従業員で組織する労働組合であり、大阪東通に対して、同社内の次長・課長に対する時間外手当等の支払を要求してきた。2001年7月には、組合及び組合員が労働基準監督署に是正申告を行い、同署は、同年10月に労基法37条・32条違反を明確に認定し、大阪東通に対して是正勧告を行った。しかし、大阪東通は、過去2年に遡っての時間外手当等の支払を拒んだので、組合は民事訴訟の準備をはじめた。
     その間、大阪東通は、同年9月27日に民事再生手続開始の申立を行い、その再生計画に従って、同年12月26日、東通にその営業を譲渡した。大阪東通の従業員については、その大部分が東通で雇用され、同じ次長・課長職(管理職)に就き、大阪東通の従業員であったときと同様の業務に従事した。
     その後、2002年3月4日、元大阪東通の次長・課長であった者のうち22名が、大阪東通に対し、時間外手当等が未払いであるとして、合計約8700万円を請求する訴訟を大阪地裁に提起した。原告22名のうち組合員は19名(うち1名は途中で脱退)、非組合員は3名であった。この裁判については、2003年5月28日、大阪東通が総額6000万円を支払う旨の和解が成立した。
    しかし、東通は、この和解成立と相前後して、管理職規定を改定する旨の文書を配布し、これに基づいて、同年5月21日に職位改定を行った。そして、この改定により、大阪支社では大阪支社の次長・課長51名中、裁判の原告となった22名のみが非管理職とされた(外には東京本社で1名のみが非管理職とされただけであった)。この22名には時間外等手当が支給されることになる一方、月額約14万円ないし約16万円の役職加給が支給されなくなったため、大幅な減収となった。
     そこで、この職位改定が組合活動を理由とする不利益取扱・支配介入の不当労働行為であるとして、同年12月24日、大阪府労働委員会に救済命令を申し立てたものである。

  3. 大阪府労委の判断
     この申立に対し、大阪府労委は、2005年11月8日、次のような内容の命令等を出した。
    「被申立人は、別紙の申立人組合員18名に対し、同人らの職位を平成15年5月21日付け職位改定がなかったものとして取り扱い、同改定の後、同人らの支給された賃金額が同改定がなかった場合に同人らが得られたであろう賃金額を下回る場合は、その差額相当額を支払わなければならない」。まさに、組合側の完勝である。
     命令は、まず、22名の職位変更を、降格及び減収を伴う不利益取扱であると認定した。この点、東通は、管理職から非管理職に変更されても職制上の資格(グレード)には変更がないから降格ではないと主張していたのだが、命令は「一般に管理職か非管理職かの別によって、権限や責任の軽重等に差異がある」などとして、この主張を退けた。
     では、この職位改定は、労働組合の正当な行為を嫌悪して行った行為といえるか。ここが本件の主たる争点だった。具体的には、@非組合員も原告となっている時間外訴訟が労働組合の正当な行為といえるか、また、そのような行為と東通が認識していたか。A時間外訴訟は別法人である大阪東通に対する訴訟であり、東通が行った本件職位改定と関係がないといえるか、である。
     命令は、@の点について、組合が、原告を募り弁護士への委任状を収集し訴訟の準備をすすめたこと、労働組合の機関紙に訴訟経過を掲載し続けたこと、弁護士との打ち合わせを主体的に行っていたこと、裁判の進行状況を原告22名に随時報告していたことなどから、時間外訴訟はかねてからの組合の運動方針に基づき、組合主導のもとに組合員が行った労働組合の正当な行為であるとした。また、東通は、組合が時間外訴訟を行うなど一連の行動を行っていたことを理由に、組合からの要求書受け取りを拒否したりしており、組合が時間外訴訟に主導的役割を果たしていたことを東通も十分に認識していたとした。
     また、Aの点については、職位改定で管理職から非管理職とされた者は会社全体で23名、大阪支社で22名であり、大阪支社の22名の全員が時間外訴訟の原告であること、大阪東通と同様に東通に営業譲渡された別会社の管理職はその全員が職位改定後もそのまま管理職とされたこと、本件職位改定は各人の管理職としての適性・能力を評価した結果であるという東通の主張には何らの証拠もないことなどから、本件職位改定は、東通が原告22名による時間外訴訟を嫌悪して行ったものというべきであるとした。東通は、時間外訴訟は別会社に対する訴訟であり東通とは無関係と主張したが、命令は、原告22名を管理職にとどめた場合、同人らが東通に対しても、時間外手当支払の要求を強めることを危惧し、かかる問題が生じないようにするため、同人らを管理職としなかったと推認されるとして、この主張を排斥した。
     なお、東通は、上記以外にも、賃金差額額が特定されていないことや、労働委員会には東通の管理職を任命する権限がないことなどを理由に申立の却下を求める主張もしていたが、前者については、不利益取扱がなければ得られたであろう賃金の回復を労働委員会が命ずることは何ら問題がなく、後者については、「不当労働行為申立制度が団結権に対する侵害を不当労働行為として禁止するとともに、当該行為を除去し現状に復することで、正常な労使関係の回復を図ろうとする制度であり、組合員に係る非管理職への職位変更が不当労働行為であることからすれば、事案に即して労働委員会が適切な救済命令を発することに問題がない」として、東通の主張を退けている。

  4. 終わりに
     上記のように、本件命令は、労働組合法の趣旨に従った、極めて常識的判断をしている。
     本件では、東通があまりにも露骨であったため、このような判断を導きやすかったという点は否めないが、非組合員を巻き込んだ不利益取扱や使用者以外の者に対する組合の活動をきっかけとする不当労働行為など、直接的限定的な労使対立に止まらないさまざまなバリエーションにおいても、事案の本質を的確に把握すれば、本件のような常識的判断が可能なのである。
     東通は中労委に再審査を申し立てた。一方では、労基法上支払義務のある時間外手当等の支払を頑なに拒みながら、他方では、労働者の当然の権利を主張するという理由で組合を嫌悪するこの会社の体質は、必ず正されなければならない。

(弁護団は、高橋典明、河村学、中西基)

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ネスレコンフェクショナリー契約社員、解雇・雇止め事件で勝利和解
弁護士 佐藤真奈美
  1.  これまでにも何度か報告してきたネスレコンフェクショナリー契約社員、解雇・雇止め事件で、平成17年11月28日、解雇・雇止めを撤回させ解決金を支払わせるという内容で、勝利和解することができた(大阪高裁第7民事部)。

  2.  事案の概要は以下のとおりである(詳細は民主法律時報2003年8月号掲載記事参照)。原告らは、ネスレジャパンの100%子会社であるネスレコンフェクショナリー(被告会社)の関西支店に勤務し、キットカットなど菓子類のスーパーマーケット店頭販売促進業務(MD業務)を担当していた。勤務していた期間は11年から9ケ月と様々であったが、一年ないし半年間の雇用期間で更新されており、原告らは定年まで働き続けようと日々業務に励んでいた。ところが、被告は、競争力強化のため販促業務を鰍`SPに委託することにした、それに伴い原告らを含む契約社員全員を(雇用期間途中であるにもかかわらず)平成15年6月30日付で解雇する、鰍`SPと請負契約を締結するように、と通告した。さらに、契約期間途中の解雇であることに危機感を感じたのか、予備的に原告ら各自の雇用契約満了時に雇止めする旨の通知もした。
     原告らはこのような理由により解雇・雇止めされることに到底納得できず団体交渉を申入れたが、被告は態度を変えず、平成15年8月1日に提訴するに至った。
     平成17年3月30日、大阪地裁第5民事部(小佐田潔裁判長)は、解雇および雇止めのいずれも無効であるとして、雇用契約上の地位確認と平成15年7月からの賃金と年二回の賞与の支払いを命じる原告全面勝訴の判決を言い渡していた。
  3. (1) 控訴審に入ってからも、被告(便宜上「控訴人」ではなく「被告」と呼称します)は、原審と同様、業務委託するか否かについての決定には広く裁量が認められるべき、原告らは正規従業員とは全く異なる雇用形態なのだから安易に解雇権濫用法理が適用ないし類推適用されることは不当であるなどと主張していた。さらには、仮に本件解雇・予備的雇止めが無効とされたとしても、さらに1年後の有期雇用契約の期間満了の際に契約は終了しているとまで主張してきた。

    (2) 第1回口頭弁論において裁判所から和解勧試がなされ、以後、複数回にわたり和解期日が重ねられた。
     原告らは、当然、会社への復帰を望んでいたが、被告はこれを拒否し、このままでは解決まで時間を要することも考えられた。
     最終的に、裁判官から和解案が提示され、その案に双方が合意することとなった。内容は、解雇・雇止めを撤回する、相当期間の給与に相当する解決金を支払うというもので、第1審の原告勝訴判決を前提とするもので、原告らの勝利的和解であった。

  4.  裁判所の毅然とした対応、何より原告らの熱意により、被告のかたくなな姿勢が崩れ、今回の勝利的和解が得られた。解雇通知から2年5ケ月、提訴から2年4ケ月、原審の判決から8ケ月を経ての解決であった。今回勝利和解できた要因は、@困難な闘いに立ち上がった当事者、それを息長くバックアップした組合(全国一般)、弁護団の団結力とチームワークの良さ、A1審で完全勝利できたこと、にあると思う。最後に、様々な困難に屈せず、最後まで要求を貫き通した当事者のみなさんに、本当にお疲れさまでしたと申し上げます。

(弁護団は、田窪五朗弁護士、鎌田幸夫弁護士、村瀬謙一弁護士、佐藤です)

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