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京阪宇治交通解雇事件で不当判決!


京阪宇治交通解雇事件で不当判決!
弁護士 愛須 勝也
  1. はじめに
     京都地方裁判所第6民事部(竹内努裁判官)は、京阪宇治交通田辺株式会社にバス運転手として勤務していた中橋健さんの懲戒解雇に関し、2005年9月14日、地位確認、未払賃金等の請求を棄却する不当判決を下した。
     判決は、被告会社の言い分を鵜呑みにした極めて不当な判決であり、中橋さんは、直ちに大阪高等裁判所に控訴した。今後、舞台を大阪高裁に移した争いが続くことになる。今後、いっそうの支援をお願いする次第である。

  2. 事案の概要
     中橋さんは、昭和51年に京阪宇治交通鰍ノバス運転手として雇用され、平成14年3月にその子会社である京阪宇治交通田辺鰍ェ設立されるのに伴って同社に移籍した。
     中橋さんは、平成14年12月2日、会社から退職勧告を受けた。その理由は、平成14年10月9日、バス運転業務中、宇治市内の「ゆうゆうの里前」バス停(ロータリー構造になっている)で乗客が待っていたのにかかわらず、ロータリーに進入せず路線を逸脱し、所定のバス停を経由せず走行したというものであった。中橋さんはこれを不服として退職を拒否したため、同月4日、懲戒解雇された。会社側は、懲戒解雇の理由として、@「故意」に、「ゆうゆうの里前」バス停ロータリーに進入せず、路線を逸脱し、バス停を通過したこと(悪質性)、Aその後の態度に反省の色が認められないこと、B従来の懲戒、教育指導、自己歴(不謹慎極まりない行動を繰り返す、「常習犯」)をあげて懲戒規程に該当すると主張した。

  3. 争点
     これに対して、中橋さんは、バス停を通過すれば次のバス停で時間調整するはずだが、そのようなことはなかったことからロータリーには入ったと思うが、バス停に確かに停車したという記憶があいまいであったので、「正確な記憶が欠如していて、正確なことが自分自身でも解らない」が、乗客の言うとおりであれば迷惑をかけて申し訳ない旨の顛末書を作成して会社に提出した。ところで、中橋さんは、バスに乗れず苦情を申し出た乗客のことについて、会社の運行管理者から「娘さん」「女の子」という説明を受けていた。中橋さんは、「娘さん」「女の子」を手がかかりに、必死に記憶を喚起しようと努力した。そして、そのときか、あるいはその前かはっきりしないが、「ゆうゆうの里前」バス停で、赤い服を着た女の子と話をした記憶が甦ってきた。そこで、中橋さんは、会社の上司に「思い出したことがあるので言っておく。女の子がバス停にいたが、その子のことか。その子が乗れなかったからか。」という話をした。それを会社は、取り上げて、中橋さんが、乗客がいるのを知りながら、バスに乗せなかったと決めつけ、「故意」の「路線逸脱、バス停通過」であり「悪質」であるとして、懲戒規程による処分の加重を行い、中橋さんに退職勧告を言い渡したのであった。注意してもらいたいのは、中橋さんは、当日のことを必死に思い出そうとしたが、そこで記憶喚起のポイントとなったのは、「娘さん」「女の子」という言葉から思い浮かぶ未成年の女の子のイメージであったということである。しかし、実際に、苦情を申し立てたのは成人の女性であったことが訴訟の中でも明らかにされた。中橋さん自身も解雇された後、同じ曜日、時刻に現場のバス停に行ってみたところ、偶然、被害者とされる女性と面会することが出来たのであるが、その女性は中橋さんが思い出した「赤い服を着た女の子」ではなかったのである。以上のことから明らかなように、中橋さんは、まったく別の日か、別の場面での出来事を勘違いして思いこんでいた可能性が高いことが明らかになった。会社も、中橋さんが勘違いをしていることはすぐ気がついたはずであるし、慎重に弁明を聞いておれば、すぐに誤解は解けたはずであった。しかし、会社は、中橋さんの態度を頭から反省の態度が見られないと決めつけて、退職勧告をしたのである。

  4. 判決内容
     中橋さんは、この点を原審でも徹底的に争ったが、判決は、本件バス停が見通しがよいから見過ごすはずはないから「故意」に通り過ぎたという常識はずれの認定をして、請求を棄却した。そもそも、本件バス路線は、長い山中の坂道を下ってきて、一定の時間調整をするバス停であり、運転手にとっては、一息入れることの出来る場所である。乗客の存在を認識しながら「故意」に通過することなどおよそあり得ない場所である。そのことは、私も現地に行ってみて確信をした。判決は、常識はずれの事実認定の誤りを犯している。
     一方、この会社では、バス停を通過するという程度の事故で懲戒処分がされることはなかった。訴訟の中では、運輸局から会社が警告が発せられるような悪質な事故でも、たった一日の減給処分に過ぎないなど寛容な処分がされるに過ぎないことが明らかになった。これらの他事例に比較して中橋さんの処分が著しく均衡を失することは明らかであった。 
     判決は、中橋さんが、被害申告をした乗客のことを未成年の女の子と思いこんで誤った記憶喚起をしたことについても、「本質的な問題ではない」として、まともに検討をしなかった。

  5.  判決言渡しの時に、中橋さんの奥様は裁判官を最後までキッと睨みつけていたという。判決後の支援の集会でも、「あまりの不当な判決に涙も出なかった」と言い、高裁での逆転勝利まで戦い抜く決意を語った姿に多くの支援者が感激し、闘いの決意を新たにしている。
(弁護団は、戸谷茂樹、梅田章二、平山敏也、橋本智子、愛須勝也)

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