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- 去る6月28日、大阪地方裁判所第7民事部は、介護保険料賦課決定取消訴訟について、何れも請求を棄却する旨の不当判決を下しました。原告は故福井宥氏のご遺族と近田二美子さんらの3名でした。
- 判決は3つの争点について判断を示していますが、何れの論点についてもそれは立法裁量であり、行政裁量に委ねられており、当不当の問題はあるにせよ裁量権の逸脱、又は濫用があるとは言えず、法及び本件条例が著しく合理性を欠き、明らかに裁量権を逸脱・濫用しているとはいえない、等々とするものである。立法裁量、行政裁量に委ねたものについては、もはや憲法秩序からする司法の判断は及ばないとするものの如くである。改めて裁判所(司法)の機能・放棄・喪失の醜状を見せつけられる思いであった。
- 争点の1は、保険料の5段階設定が憲法14条に反しないかという点であった。判決は応益負担の考え方による保険料の徴収を合理的であるとの判断を前提に(何故応益負担の考え方を前提としたのか理由がはっきり示されていない)、それでも応能負担の理念も加味して、保険料の5段階設定を肯定してしまっている。然し、無収入者や住民税非課税世帯からも保険料が徴収されるのに対し、所得が250万円以上ある者はいくら所得があっても最低保険料額の3倍しか賦課されないのであるから、保険料の逆進性は明らかで平等原則に反するのではないか。
争点の2は、低所得者に保険料を賦課することが、憲法25条に反するのではないかとの論点である。判決によると「社会保険制度であることから低所得者からも保険料を徴収することにしたものであり、その徴収方法には一応の合理性が認められる」と述べる。しかし、低所得者から保険料を徴収することには一応の合理性も認め難い。社会保障制度の一環である筈の社会保険制度であるのだから。続けて判決は「国民の生活水準は現在の収入のみによって決まるものではなく、これまでに蓄積した資産等によっても大きく左右されるものであり、現時点で収入の少ない低所得者からも保険料を徴収すること自体が、直ちに憲法25条の趣旨に反するとはいえない。」と判示する。日本社会の貧困者層は「蓄積した資産」を確保しているのか。生存していること即健康で文化的な人間らしい生活ではない。
争点の3は、保険料の特別徴収方式(年金からの天引き徴収)は憲法25条に反しないか、である。判決は保険料を確実かつ効率的に徴収することができる。さらに介護保険制度の財政安定化により、保険給付の確実な提供という利益を被保険者は享受することができるとも述べる。然し保険料を老齢退職年金から天引きされて徴収され、いざ介護給付を受けようとしても、料金の負担に耐えられず、必要な介護給付が受けられないという現実が広汎に存在している事実を、裁判官も知らない筈はあるまい。やらず、ぼったくりと評される介護保険制度。そのさらなる改悪が進められつつあるとき、この判決の酷さは格別である。保険料徴収の便宜性、効率性をいくら強調されても、右手で与えて左手で奪う感を拭いきれない。保険制度から措置制度への回帰が社会保障制度としての在り方であり、福祉国家としての健全性を示すものといえよう。憲法9条改悪による軍事国家への動きは、福祉の後退を随伴するのか。原告らは控訴して、全国の一揆の会の人たちと共に闘うこととなった。
- (代理人は小生と橋本敦、豊川義明、梅田章二、城塚健之、阪田健夫、豊島達哉、竹下育男、河野豊、杉島幸生、中西基、井上耕史、大西克彦)
- はじめに
平成17年5月30日、東陽工業株式会社(大阪市平野区)から一方的な賃金カットを受けたことにより、化学一般関西地方本部加盟の東陽工業株式会社従業員組合員22名が、未払賃金の支払いを求め、大阪地裁に提訴しましたので報告致します。
なお、本事件は、平成17年7月19日現在、第1回口頭弁論を終えたばかりであり、その性質上、概括的な内容にならざるを得ないことをご了承下さい。
- 事件の概要
東陽工業においては、かねてから、会社からの要求を受けて、従業員組合と会社との間で賃金規定の改訂に向けての話し合いがなされていました。そして、昨年(平成16年)の秋、従業員組合は、会社からの要求に譲歩し、賃金規定の改訂に試験的に応じることとなりました。
しかし、その矢先のことでした。年末になり、突然、会社側は試験的に実施され始めた改訂された賃金規定を破棄することを一方的に宣言し、更なる大幅な労働条件の引き下げ等を内容とする方針を発表したのです。その内容は、@給与の最高支給額を30万円とし、超過分については一律にカットする、A役職手当も一律にカットする、などという不当なものであり、何の根拠もないものでした。
平成17年3月25日、会社側は、従業員組合からの強い反対を受け、組合や原告らの同意が全くないにもかかわらず、会社側の一方的な方針に基づく上記賃金カットを強行してきました。これにより、率にして二二%に及ぶ賃金カットを突然受けることとなった原告もおり、日々の生活に与える影響は大きなものがありました。
従業員側は、会社側に対して本件賃金カットの違法性を指摘し、会社の方針の撤回などを求めてきましたが、会社側は、理由はおろか実質的な話し合いに応じる姿勢さえ示そうとしませんでした。そのような中、平成17年3月分だけでなく、4月分、5月分の給与についても本件賃金カットがなされたままの状態でした。
- 提訴に至るまで
上記のように、本件賃金カットには何らの合意も根拠もなく、その進め方も強引極まりないものでした。そのため、違法であることは明らかであったため、当初は、従業員組合が本件賃金カットの違法性を指摘し、訴訟提起もありうることを示すことによって、事態が解決するのではないかとの個人的期待もありました。
しかし、その期待は見事に裏切られ、5月支給分もカットされたままの状態でした。のみならず、会社側は、チェックオフの廃止を推し進めるなど従業員組合に対しての圧力をかける姿勢さえ示すようになりました。そこで、やむなく、平成17年5月30日、大阪地方裁判所に未払い賃金の支払いを求め提訴しました。
- 提訴後、今日(7月19日)までの会社側の対応
提訴後、会社側からどのような反論がなされるかを待っていたところ、第1回口頭弁論期日前である6月分の給与支払い時に、会社は、本年3月から5月までの違法なカット分を上乗せして支払ってきました。
- 今後について
会社側の上記対応により、一見したところ、本件事件は一応の解決が図られたかのようにも見えます。また、本件提訴によってこれ以上の会社側の横暴を制止できたという意味においては、本件提訴には大きな意義があったといってよいものと思われます。
しかし、法的にいえば遅延損害金が未払いですし、またなによりも、会社側の意図が不明なままです。今後、会社が不当な手段を用いて同様の賃金カットを強行してくる可能性もないとはいえません。
本件賃金カットの違法性を会社側に認識させ、同様の行為がなされないようにするとともに、会社による違法不当な圧力を阻止するべく、今後とも会社側の動向を注視していく必要があります。このような観点からいえば、本件事件は一歩を踏み出したばかりとも言うべきかもしれません。
- (弁護団は、長野真一郎、田中宏幸、愛須勝也、瀧澤崇)
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