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初芝橋本高等学校増田事件  就業規則の適用を認め高裁で和解
がんばってよかった! 派遣労働者が、派遣先の正社員化を勝ち取る
近畿コカコーラ・パート雇止め事件 不当判決の報告


初芝橋本高等学校増田事件  就業規則の適用を認め高裁で和解
弁護士 村 田 浩 治
  1. 事件の概要
     大阪初芝橋本高等学校の名前をご存じの方は多いと思う。野球とサッカーではたびたび和歌山県代表で全国大会に出場している。この野球チームやサッカーチームが遠征や合宿するときの運転を2002年3月に退職するまでしていたのが増田さんだ。
     増田さんは、1992年に、知人の紹介で初芝橋本高等学校の学校庶務の仕事をするということで、初芝橋本高等学校に途中採用された。4月の採用時には、給与が年額350万円であること、定年が満65歳であるとの説明を受けたが、それ以外に取り決めはなく、1年間の雇用期間を定めた有期契約であるとの説明もなく、契約書なども交わされなかった。(後に分かったことだが、350万円というのは中途採用の場合の賃金規定とほぼ同程度の賃金だった。)
     増田さんは、学校では「校務員」あるいは「用務員」と呼ばれ、スクールバスの運転の外、他の事務職員と同様に〈1日8時間〉〈週5日間〉の勤務に従事していた。増田さんの業務は、スクールバスの運転をはじめ、校舎の解錠、校舎・校庭・花壇のメンテナンス等学校の庶務全般に及んでいた。
     勤務してから2年目の春、増田さんは、事務長から就業規則を交付された。増田さんは、これで一人前に扱ってもらえると期待したが、給料は、退職まで増額されず、就業規則に記載されているバス運転手当などは全く支給されてこなかった。
     増田さんは、2年目以降、自分の扱いに疑問を感じ1993年春頃から事務長に苦情を述べ、改善を図るよう求めた。学校側は、これに応じることなく、増田さんの事情を聞いた私学教職員組合の初芝分会の先生が、これを取り上げた。増田さんが労働組合に加入して、団体交渉でもって給与の改善を求めるようになったのは、2000年頃になってからであった。労働組合の団体交渉申し入れにも学校側は取り合わないまま2002年3月に「定年退職」を理由に、学校を退職せざるを得なくなった。こうして初芝を被告として就業規則の適用による不払い賃金、超過勤務、退職金等を求めたのである。

  2. 争点と1審判決
     本件の争点は〈増田さんに就業規則〉が適用されるか否かである。就業規則は、「職員とは、常勤の教育職員及び事務職員をいう」と定義している。増田さんは教育職員でないが仕事は、庶務的な内容であるものの、用務員という就業規則上の特段の区分もなく、したがって就業規則に反した契約は無効であると考えるのが当然であった。学校側は、増田さんは、常勤の職員でなく事務職員にあたらないとして争った。
     しかし、増田さんの仕事が、スクールバスの運転等が多いとしても、また経理や総務、庶務の業務と外見的には異なるとしても、教育職と一線を画しつつも、学校事務を担うという点で共通しており、広範な学校事務の一態様の業務を行っていたことは自然な見方である。事務職員間の役割分担と考えて何ら差し支えはないはずである。学校側は、定年だけは、就業規則の適用通りに適用し、職を奪いながら、賃金規定だけを適用しないのである。教職員共済の退職金の加入もしていることが判明したが、学校側は組合の要求に応じる事を嫌ったのか、就業規則の適用を一切認めず、退職金もわずか数万円しか支給しなかったのである。

  3. 1審判決を受けて高裁で和解
     1審判決は、ほぼ当方の主張を認め、就業規則の適用があるとして退職金と2年分の未払い賃金約1600万円の支払いを認めた。増田さんに特別の契約を認める要素がない以上、当然の決定であった。判決の前に和解勧告もあったが、初芝側はこれに応じず判決となったのである。
     高裁では、裁判所の和解勧告を受けて当方が譲歩して、1100万円の支払を受けることで2004年12月に和解が成立した。

  4. 非正規雇用の労働条件にも
     私は、非正規雇用の問題に関心をもっているが、この事件で労働組合の先生が、元々自分とは待遇が違う用務員さんの訴えに耳を傾けて取り上げたことに敬意を表したい。
     しかし直用社員であれば用務員という立場でも労働基準法に反した格差を許さないとして労働組合が取り上げ解決にいたったことは、すべての労働者の労働条件を向上させる労働組合の原点ともいえる活動の結果として、胸を張って報告してほしい。 そして残念ながら、今は派遣労働者に切り替えられ低い労働条件となっているバス運転手にも今後目を配ってほしいと思う。

(弁護団は、岡崎守延・村田浩治・高橋徹)

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がんばってよかった! 派遣労働者が、派遣先正社員化を勝ち取る
弁護士 河 村  学
  1. はじめに
     本件は、派遣労働者が、雇い止めの通告をはね返し、派遣先の正社員として雇用されるという成果を得た事案である。派遣労働者の直用化については、労働局が直用指導した富士通デバイス事件(平成16年4月。東京労働局)、高輝度光化学研究センター事件(平成16年6月。兵庫労働局)があるが、正社員化された事案は全国的にもあまり例がなく、まさに画期的な成果であるといえる。

  2. 事案の概要
     本件労働者は、1989年から派遣労働者として大手電器メーカー(A社という。)で設計図面作成等の業務に従事した後、翌1990年からA社の勧めで、A社の子会社である請負会社(B社という。A社の子会社)で雇用された労働者としてB社で働く形態となった。しかし、指揮命令は相変わらずA社が行っていた。その後、1998年頃以降、徐々に派遣労働契約的な契約書をB社が作成するようになったが、就労形態は何ら変化がなかった(但し、2001年1月から担当業務が提案書等の作成業務となった。)。
     2004年7月、本件労働者は、B社担当者から同年9月末で、期間満了により雇い止めとなる旨通知を受けた。
     本件労働者は、正社員と同じように働いてきたのに許せないとして、遠方ではあったが、派遣労働研究会に相談に来たので、弁護団を配置して、本件に取り組むこととなった(弁護団は、村田浩治・河村学・佐藤真奈美・井上明彦)。

  3. 本件の見方及びその取組み
    (1) 本件において、B社は本件労働者を指揮命令していないので、A社とB社との請負契約は単なる形式に過ぎず、その実体は労働者供給契約である。この場合、雇用者と指揮命令者が分離している点で労働者派遣と類似するが、派遣法の要件を満たしていないため違法であり、かつ、労働者派遣契約は、派遣法に基づく適法な派遣について、職安法44条の規制を例外的に解除したものに過ぎないから、本件形態は職安法違反に該当するとみるべきである(同法44条違反については、供給先・供給元双方に対する罰則規定がある)。
     また、1996年頃から、派遣契約的な契約書が作成されているが、特に政令指定業務(いわゆる26業種)に該当しない業務に従事しており、派遣法上の期間制限違反は明らかであった。
     このように本件労働者の就労形態は、派遣法・職安法に違反するものであった。
    (2) そこで、弁護団は、まず労働局への是正申告を行った。是正内容はA社に正社員として直接雇用する形で是正措置を取れというものである。労働局では、このような是正申告を扱ったことがないようで少なくとも積極的とはいえない対応であった。しかし、労働者の熱意ある取組みと弁護団による意見書提出等を行うなかで、徐々にではあるが局による調査も行われた。
     また、重大な法違反事件だったので、マスコミにも取材に来てもらった(結局は、解決したこともあり報道せず)。
     さらに、内容証明を送って、弁護団とA社との間で直接交渉を行うとともに、本件労働者が地域労組に加入し、A社に対して(B社に対しても)、団体交渉の申し入れを行った。
     交渉では、当初、A社は、弁護団への回答を遅滞し、労組からの団交申し入れがあると「団交を申し入れるのであれば弁護団への回答はしない」という反応であった。 弁護団としてはこのままでは雇い止めが強行されてしまうので裁判を準備しなければならないと考えていたところ、局の調査やマスコミの動き、労組の動きなども影響したのか、急遽、A社からの交渉申し入れがあり、直接雇用に向けた回答が行われた。ただこのときは有期雇用を前提とした回答しかなかったため、さらに、労働局からの強力な指導を求めるとともに、本件労働者も含めた交渉を行い、最終的には、A社の正社員となることが約束された。
      条件としては、@A社の正社員にする。A労働条件は従前のものを下回らない。B当初の業務内容については労働者の希望を尊重する。Cその他はA社の就業規則に従う。というものである。

  4. 後日談及び本件の意義
     本件労働者は、現在、A社の正社員として元気よく働いているようである。職場に仲間が多く、仕事も真摯に取り組んできたので、「移行」もスムーズであったようだ。
     また、本件労働者が労働局に報告に行ったとき、担当者をはじめその場にいた職員がひどく驚いていたそうである。それもそのはず、大阪労働局でさえ2004年4月から11月まで、直接雇用の指導をしたケースは1件もないとのことである。
     職安法・派遣法違反の就労形態は直ちに是正されなければならず、その是正は直接雇用の方法によらなければならないこと、これは、法の枠組みである。現に厚生労働省は、派遣可能期間を超えて就労を継続している場合の取り扱いとして、「当該派遣労働者の希望による場合を除き、(派遣先に対し)期間の定めなき雇用によるよう指導」等をすると定めており、また、その場合の契約関係については、「派遣先との雇用関係が成立していると推定でき、訴訟において、派遣労働者は、勧告の内容に従った雇用関係の確認や損害賠償請求を行うことが可能である。」としているのである。
     現在の日本社会において、もっとも遅れた機関となっている裁判所の立場を「是正」するためにも、実際に使用している者に使用者としての責任を取らせる闘いを広くすすめる必要がある。
     本件は、法の枠組みに従った正しい解決のあり方を示したものとして重要な意義をもつ。


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近畿コカコーラ・パート雇止め事件 不当判決の報告
弁護士 鎌 田 幸 夫
  1. はじめに
     年明け早々残念な報告をしなければならない。1月13日、大阪地裁民事5部下田敦史裁判官は、近畿コカコーラ・ボトリング株式会社(被告会社)に勤務していた原告ら3名を含むパートナー社員(フルサービスメイトの名称で1年間の雇用契約を反復更新されていた)が、平成14年年末をもって雇止め(解雇)されたため、解雇の無効を理由として地位確認と賃金支払いを求めた事件で、原告の請求を退ける原告敗訴の不当判決を言い渡した。詳細な判決の検討、批判は後日に譲るとして、事案の概要と特徴、争点と判決の内容のみを報告する。

  2. 事案の概要と特徴
     事案の内容は、被告会社が、最近数年間でも、年間売上高が伸び、巨額(100億から50億円)の経常利益の黒字、剰余金(1600億円強)、株式配当、役員賞与の継続など経営が極めて、順調であるにもかかわらず、競争力を強化するため「経営構造改革」として分社化を進め、カップオペレーション業務(紙コップ飲料の自動販売機の納品及びメンテナンス)を分社化した被告会社の100%完全子会社である関西ビバレッジに業務委託し、正社員については、在籍出向(50歳以上は、労働条件を切り下げて転籍)させ、1年の雇用契約を反復更新していたパートナー社員については、76名全員雇止め(解雇)した。そして、解雇したパートナー社員のうち恣意的に45名を関西ビバレッジで「新規採用」したが、原告ら3名を含む31名を「採用」しなかったというものである。
     本件の特徴は、第1に、経営が順調で巨額の経常黒字と剰余金のある体力ある大企業が、さらなる競争力を強化するためとして、企業再編を押し進める過程で攻撃的なリストラを行ったということである。
     第2に、企業再編を契機とするリストラの手法として、子会社への業務委託という手法をとったことである。ご承知のとおり、会社分割という手法をとれば、労働契約承継法で、正社員もパート社員も設立会社に労働条件そのままに雇用が承継されてしまう。それを避ける(脱法する)ために、業務委託という手法を取り、正社員は、 労働条件を引き下げて転籍させ、パートは、業務委託を理由として仕事がなくなったことを理由に全員を雇止めしたのである。
     かかる手法が許されるならば、企業は、別会社化と業務委託という形さえとれば、パートを全く自由にリストラ解雇できることになってしまい、その不当性は明白である。労働契約承継法の国会附帯決議でも「企業組織の再編のみを理由として労働者を解雇することは許されないという判例法理の周知徹底を図ること」とされており、業務委託のみで解雇(雇止め)が正当化されるものではなく、整理解雇の法理の適用(類推適用)による制約に服するのである。

  3. 本件の争点と判決の内容
    (1) 本件の争点は、@原告らの雇用契約に解雇法理が類推適用されるか、A平成14年度の契約更新に際して、次年度は更新しないという雇用契約終了の合意があったか、B解雇法理の類推適用があるとして本件雇止めに合理性があるかである。
    (2) 判決は、争点@について、原告らの雇用関係について「ある程度の継続が期待されていた」として、雇用継続の合理的期待を肯定して解雇法理が類推適用されるとした。ところが、争点Aについては、原告らが、平成13年末に署名押印した平成14年度の雇用契約書に「契約更新はしない」旨の文言が記載されていたことを理由に「平成14年12月末をもって雇用契約を終了させる合意が成立した」と判断して、原告、被告が最大の争点として主張立証した争点Bの雇止めの合理性についてなんら判断することなく、原告らの請求を棄却したのである。
     しかし、労働契約を終了させる合意は、使用者から契約が終了することについての十分な説明がなされ、労働者の身分を失うことを十分に納得したうえで、客観的で明確な意思表示がなされることが必要である。
      しかるに、被告会社の経営は好調であり、原告らの担当業務は、継続的に存続していたこと、原告らは平成14年度の契約更新前に、平成15年1月以降は契約を更新しない旨の説明を受けたことはなく(但し、被告会社は、その旨の説明会を開催したと主張している)、しかも、平成14年度契約書は、過去の契約書とまったく同一の定型文言に「その他」として「契約を更新しない」と印字されており、原告らは、出勤前の忙しい時間帯に例年と同じものであると考えて署名押印したものであり(原告らが、不更新条項に気づいたのは平成14年11月に正式に雇止めの通知をされてからのことである)、これをもって、原告らが10数年も勤めてきた会社を異議なく退職する旨合意したものとは、到底いえるものではない。
     本件判決は、事実認定に誤りがあるばかりか、対等当事者間の売買契約のように、契約書の不動文字のみを根拠に労働契約の終了を断じており、労働法を理解しない手抜き判決と厳しく批判されなければならない。

  4. 最後に
      原告3名は、解雇(雇止め)されて「私たちは使い捨ての紙コップではない。人間として扱って職場に戻せ」と全国一般に加入して裁判闘争に立ち上がったものである。原告らは、今回の不当判決に承服できないとして、1月18日控訴手続きをとった。弁護団も、判決検討会などを通じて会員の皆様の意見をいただき、控訴審での闘いに備えたいと考えているのでよろしくお願いしたい。

(弁護団は、田窪、村瀬、佐藤、鎌田です)

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